セッション前の準備

このシナリオはオリジナルオリジン「イーヴンフォール」を取得したPC専用のシナリオである。想定されるプレイ時間は、キャラクター作成を除き、オンラインボイスセッションで3時間前後だ。
ヴィランデータ、パワーなどを参照するため、GMは基本ルールブック(R1)及び学園マッドネス(R2)を所持していることが望ましい。
取得したPC
このシナリオは成長点を15点ほど取得、使用したPCを想定して作成されている。
また、このシナリオはR1掲載のリプレイ『マスク・オブ・ビースト』が起こった世界のその後が舞台となるため、GM及びPLはリプレイを読んでおくとよいだろう。

『マスク・オブ・ビースト』
P5~99。
シナリオ概要
 セカンド・カラミティ、そしてその一ヶ月後に起こったファクトによる事件から一年が経ったある日。

一年が経った
期間はGMが任意に調整してよい。
 人々の記憶からそれらが忘れ去られるのを待たずして、あの悪夢を焼き直すかのような事件が起こった。
 人質を取り、ヒーローたちの動向を把握し、民衆に選択を委ねた上での「提案」に、ヒーローはなすすべがなくなった。
 だが、PCたちは違う。イーブンフォールであるPCたちは己が信念、心、衝動のままに、行動を開始するだろう。
 果たしてPCは、ティーチャーの目的と正体を暴き、その計画を阻止することができるだろうか?
事前公開情報

リトライ:2
初期グリット:2
クエリー:2
チャレンジ:2
バトル:2(決戦フェイズ含む)

エントリー(PC共通)

新宿アルタビジョンに映し出された映像。いつかの事件を思い出すような、狼のマスクを被った男の演説。
「こちらには人質がいて、キミたちの動向は筒抜けだ。‥‥何が言いたいか、わかるだろう?」
ヒーローたちはヒーローであるがゆえ、その凶行を黙って見ているしかなくなった。
‥‥イーヴンフォールである、キミたちを除いて。





導入フェイズ

イベント①

[悪夢の演説]

・登場PC:なし(任意で登場してもよい)
・登場NPC:ザ・ティーチャー
・場所:新宿アルタビジョン前

登場PC:なし
映画などでありがちな「今作の悪役が何らかの野望のため行動を開始する」シーンだ。
▼状況1
「ごきげんよう、諸君」
新宿アルタヴィジョン前、雑踏に響いた声に人々が顔を上げる。
「久しぶりだな。もう以前のことなど忘れてしまっただろうか? 思い出したものも、そうでないものも聞いてほしい」
「前回の講義は『このままでは淘汰されるばかりの現人類を我がフォーセイクン・ファクトリーの管理下において保護する』というものだった。それについて、説明が足りなかったと思ってね」
ゆっくりとざわめきが周囲に広がっていく。その原因であるザ・ティーチャーは、ゆっくりと、赤子に語りかけるような慈愛を持って演説を続ける。
「私がキミたちに教えたいのは、今この世界のあり方が間違っているということだ。現人類と超人種を無理やり同じ環境に置こうとするこの世界は間違っている」
「現人類の諸君。キミたちは少なからず、超人種を脅威と感じたことがあるはずだ。自分たちにない力を持っている、敵わない相手。何かの拍子にそれが自分たちに向けられたら? ‥‥その恐怖は超人種にはわからないだろう」
「超人種の諸君。どうして力を持つ者が持たない者を伺わねばならない、合わせねばならないのか? ‥‥そう思ったこともあるのではないか。超人種登録の義務化や、入国すら禁止する国など不満を感じる場面は多々あっただろう」
「単純な話だ。我々は違う生き物だ。それを同じように扱おうとする‥‥大前提から間違っていたのだ! キミたちは海の生き物と陸の生き物を同じ環境に置くだろうか? どちらかに合わせればどちらかが割を食う。当然のことだ」

聴衆の多くは彼の言葉に聞き入っている。それも仕方のないことかもしれない。現人類と超人種が共に生きるこの世界で、誰もが一度は感じるであろう「違い」について、答えが与えられようとしているのだから。
「それを踏まえて、私はキミたちに『現人類と超人種を隔離し、それぞれの世界で生きる』ことを提案しよう」
「何、『区別』するだけだ。超人種は超人種だけの、現人類は現人類だけの、それぞれが互いに脅かされない平和な世界を私が用意しよう。当然今までに比べれば多少の不自由は感じることになるかもしれない。だが、キミたちを悩ませていた種の違いによる苦悩、軋轢、不満は取り除かれ、デメリット以上のメリットを得られることを保証しよう」
「勿論、救われたくば六人殺せ‥‥などとは言わない。全員にチャンスを与えよう。全ての者に平等に、正しい世界の住人となる権利を」
ティーチャーは、自身の居城である空中要塞ディーバロンを某所に停泊させ、提案に賛同する者はそこを訪れるようにと告げる。
「私はこの社会をあるべき姿にしたいだけだ。一週間の時間を与えよう。その間よく考えて欲しい」

演説
長い!!!!
ここに記した文章は雰囲気を伝えたいがための一例に過ぎないため、適宜省略し、以下のことをプレイヤーに伝えればよい。
・現人類と超人種は違う生き物であるため、別の場所で生きた方がお互いのためだ
・その場所はファクトが用意し、誰でも受け入れる
・考える時間を一週間を与えるので提案を受け入れる者は某所に停泊したディーバロンにやってくること
・ティーチャーは前回に比べ随分と穏やかであり、提案内容も優しいものだと感じる
・そのためか民衆に反発する様子はほとんどなく、それぞれがどうするか考えているようだ
▼解説1
現ティーチャーは迫害された過去を持つサイオンのヒーロー、アポロ・ザ・ルクスだ。

アポロ

アポロ・ザ・ルクス
27歳男性、零等星。道端で好感度アンケートを行えば上位に名が上がる正統派ヒーロー。
本来ランクの低いものが行うような地域の防犯講習や清掃活動から、巨大なヴィラン組織を相手に大立回りを演じるなど活動の幅も広い。ファンクラブを数えれば片手では足りないとかなんとか。
(これらの情報はイベント②でアポロが登場した時にPCたちが知っているものとして伝えてもよい。)
「エンパシー(R2 P58)」の初期値は「中立」。
自身の過去に重ね合わせてしまうため、迫害したものたちであるにも関わらず、弱者である現人類に殊更優しい。
彼は心の底から現人類のことを思い、守ろうとしているのだ。 勿論、超人種についても悪くしようとは思っていない。
初めから別の世界で生きていれば、彼が迫害されることもなかったのだから。
彼は自分の思う、理想の「平和な世界」を作ろうとしている。

▼状況2
「それから、ヒーローの諸君へ」
「キミたちはすぐにでも行動を起こそうとするだろう。それぞれにゆっくり考えてもらいたい私にとって、それはとても困る。あまりこういう手段は取りたくないのだが、キミたちからも時間をもらえるように『人質』に御足労いただいた」
画面がぐるりと回ると、十数名の拘束された人間の姿が写る。誰にも外傷はなく気絶しているだけのようだが、その人選が問題だった。
「よく知った顔だろう? 政府のお歴々に、資産家の令嬢方。そして、ガーディアンズ・シックスの代表諸君だ」
「キミたちが何もせず、じっとしていてくれるならば彼らの安全は保証しよう。ああ、キミたちがたった今行った緊急招集、及び会議については見逃してやるとも。それ以上の行動に対しては、強硬手段を選ばざるをえない」
「こちらとしても、ヒーローが人質や民衆を見捨てるような選択をとって欲しくはないのでね」
そして、長い演説は終わった。それを聞いた者たちはティーチャーの「提案」について考え込み、雑踏はただただ静寂が支配していた。

▼解説2
他の人質はともかく、G6の代表たちがどうやって拘束されたのか‥‥という疑問の答えはティーチャーがG6に自由に出入りできる上、力も持ったヒーローであるからだ。最も簡単な仕事だったかもしれない。
ちなみにこの演説はライブではなく録っておいたものであり、代表たちはG6の使われていない倉庫に幽閉されている(他の人質についてはイベント④参照)。
演説が行われたと同時に緊急招集をかけてはどうかと提案したのはアポロなのだが、事情を知らないものはまるでヒーローたちの現状が筒抜けのように感じるだろう。牽制には十分だ。

▼エンドチェック
□ティーチャーが演説を行った


イベント②

[緊急会議]

・登場PC:PC全員
・登場NPC:アポロ・ザ・ルクス
・場所:G6本部、など
など
G6本部にやって来ず、音声や映像を端末などで確認している者もいるかもしれない。
イーヴンフォールであるPCにとって、ヒーローが一同に会する場所など居心地がいいわけはないからだ。

▼状況1
G6本部、大会議室。
ティーチャーの演説、それに伴う緊急召集を受け多くのヒーローがここに集まった。

普段であればG6のトップである六人が座っている席には、それぞれのオリジンから実力と人気を兼ね備えた別のものが代理として席についている。
「会議など必要ない! すぐにでも奇襲をかけるべきだ! それともヴィランに好き勝手させておいていいと思うのか?」
「そうは思わないが、どうしようもないだろう! ヒーローだけならまだしも民間人が囚われているんだぞ!」
トップが変わろうと、初動の遅さは折り紙つき。
ヒーローは動くべきか動かざるべきか、会議はまとまる気配を見せない。

▼解説1
会議が開かれるにあたって、G6の連絡役であるチェインがPCたちの下にもやってくる。そして、手も足も出ないヒーローの現状を目にすることになるだろう。
もしPCが何かしら発言するようなら、誰もが適当にあしらい「絶対に勝手に行動しないように言い含める」だろう。「イーヴンフォールは同じ立場であるはずのヒーローたちからも煙たがられている」ことが伝わるよう処理するとよい。

絶対に勝手に行動しないように
押すなよ! 押すなよ!
▼状況2
「ちょっといいかな」
言い争いに発展しかけている会話を遮って手を挙げたのは、サイオンの代表の席に座っているアポロ・ザ・ルクスだ。
「僕たちヒーローは人々を守るためにいる。どんな小さな犠牲でも、それが人命であるなら払うことをよしとしてはいけない」
「きっとチャンスは来る。辛いだろうが耐えてくれ。今一人でもティーチャーに逆らえば、それは全てを失う事に繋がる」
アポロはヒーローのあり方について真摯に語る。
それに心から納得できたわけではいないものもいるようだが表だった反論は出ず、そのまま会議は「ヒーローは動かず、ヴィランの出方を様子見する」という方針に決着したようだ。

ヒーローのあり方
彼の考え方は「ヒーローは民衆のためにあり、決してハッピーエンドを諦めず、全てを救う」を地で行くものだ。青臭いまでの理想論に聞こえるかもしれないが、それを現実にできる能力があるからこそ彼はそれを貫いてきた。
‥‥のだが。
▼解説2
アポロの一言により、ヒーローたちの方針が決まる。この場面はプレイヤーに「アポロは王道を行くヒーローであり、並み居るヒーローたちの中でも特に決定権を持っている」ことを伝えるためのものだ。
PCが彼に話しかけた場合、他のヒーローとは違いきちんと返答をしてくれるが、「何かを得るためには必要な犠牲もある(人質を省みず行動を起こす)」という考え方には決して同意しないだろう。

▼状況3
そんな様子を見ながら、キミたちは思うだろう。
ぬるい、と。
ヒーローはヴィランを倒すためにいる。このまま待ちに徹すれば、ヴィランの思惑通り。そんなことは許せない。
G6本部に背を向け、キミたちは人知れず行動を開始した。

▼エンドチェック
□PCがアポロと出会った/アポロのことを知った
□ヒーローは動かず期を待つことになった
□PCが独断で行動を開始した



展開フェイズ

PCはティーチャーの目論見を壊すべく、ディーバロンへの侵入、人質の解放、ティーチャーの撃破を試みる。
オリジンの性質上あえて合流イベントは用意していないため、PCたちはプレイヤーが望むなら別行動しているものとしても構わない。

別行動
支援にあまり旨みがないからできることだ。ちなみに、イベント⑤はバトル・イベントなのでそのあたりで合流すると良いだろう。

イベント③

[ディーバロン潜入]

・登場PC:全員
・場所:ディーバロン周辺、内部
・イベントタイプ:チャレンジ

▼状況
ファクトの母艦、空中要塞ディーバロンはその姿を衆目に晒し、堂々と停泊している。
停泊
都内のある程度広さがある場所だ。空港でも埋立地でも構わない。
周囲はファクトの構成員によって警戒されているが、ちらほらとディーバロンに近づく一般人の姿も見える。演説に共感し、いち早く安全を得ようと行動を起こした者たちだろう。
キミたちがティーチャーを探すにしろ、その動向を探るにしろ、まずはあの中に入る必要がある。

▼解説
先の声明でヒーローが動けば人質の命はないと告げられ、内部にティーチャーがいるかもわからない状態で正面から堂々と殴り込む利点はゼロだ。
PCは、構成員の警戒が途切れた瞬間を狙う、一般人のふりをして潜入するなど、できるだけ目立たずことを済ませなければならない。
次の通り、チャレンジ判定を行うこと。
一般人のふり
例えば、プレイヤーから一般人に《変化》して侵入するなどの提案があった場合、パワーの判定に成功さえすれば判定1は勿論、判定2まで自動的に成功させる(もしくは大幅にプラス修正を与える)などしても良いだろう。
他のオリジンに比べ、イーブンフォールはチャレンジ判定が苦手なため、できるだけ隠密にという点さえ守っていればプレイヤーの提案を普段より多めに拾うようにしてほしい。

○チャレンジ判定
事を荒立てず内部へ侵入する

技能:知覚、作戦、隠密のいずれか
修正:なし
回数:3回(別々のPCが判定する)

▼成功した
状況2へ場面を移行する。

▼失敗した
判定に失敗したPCのみ、チャレンジ判定2に-20%の修正を受ける。
または、リトライを失い、再度チャレンジ判定を試みてもよい。

▼状況2
キミたちは怪しまれることなくディーバロン内部へと侵入した。
入り組んだ通路を慎重に進み、多くの部屋を確認していく。その最中、ふと入った部屋には自らやってきた一般人たちが待機させられていた。
キミの態度に怪しいところはなかった。しかし、キミの顔を見て明らかに驚いたような顔をしたものがいる。今にもその口は「ヒーローが何故ここに」と動きそうだ。
ここで正体がバレるのはマズい! 早急に口を塞がねば。

○チャレンジ判定2
キミに気づいた者の口を塞ぐ

技能:①白兵、射撃、霊能
   ②心理、交渉
   ③経済
修正:なし
回数:それぞれ1回(別々のPCが判定する)

▼成功した
キミたちは騒ぎを大きくすることなく、調査を続けることができる。

▼失敗した
判定に失敗したPCのみ、決戦フェイズの戦闘開始時に[浪費6]を受ける。
または、リトライを失い、再度チャレンジ判定を試みてもよい。

▼エンドチェック
□ディーバロン内部へ侵入した


イベント④

[懸念と信念]

・登場PC:全員
・場所:ディーバロン内部・とある部屋
・イベントタイプ:クエリー

▼状況
探索を続け、キミたちは妙に警備が厳重な部屋の前にたどり着いた。
物陰から様子を伺うと、部屋から出てきたデラックスマンが見張りと会話しているようだ。
「これで人質全員の洗脳が終わった。念のため、見張りを続けろ」
「ハッ! しかし、何のために洗脳を? 大人しくさせるためならば他にいくらでも方法は‥‥」
「それだけならば、な。ティーチャーの思想を植え付けることで、彼の記憶を受け入れやすくなり次の器とできるのだ。彼の今の器に何かあった時のためにも保険は多いほうがいい。中には表の顔としてなかなか使えるものもある」
「今自主的に集まってきた奴らはこいつらよりは簡単だろう。なんせあの演説を聞いてやってきた奴らだ。下地はできているようなものだからな」

去っていくデラックスマンの足音を聞きながら、キミたちは考える。
ティーチャーには兼ねてから中身が入れ替わっているのではないかという噂があった。先ほどの話が真実ならば、ティーチャーの思想に染まった者がいる限り前身の記憶は引き継がれ、真の意味でティーチャーが倒されることはない、ということだ。
そして人質に対しては洗脳が終わってしまった。つまり、ここにいるのは全てティーチャーの器候補だ。

▼解説
ティーチャーのパワー《記憶の継承》の使用には制限がある。
それは対象が「前ティーチャーの思想に共感していなければならない」‥‥という、このシナリオだけの設定だ。

このシナリオだけ
何度もティーチャーと対峙したことのあるプレイヤーは初耳の設定に首を傾げるかもしれない。このシナリオだけのものだと話してしまった方がよいだろう。
また、ないとは思うが、射程が1だから離れていれば問題ないなどとクエリーの趣旨を無視する者にGMが腹を立てた場合はパワーの射程と効果を好きに変更して運用し、このような例を提示したシナリオ作者のせいにしよう。
このクエリー・イベントでは、ヴィラン(しかも世界最大規模の組織のボスだ)になる可能性が高い一般人をどうするか、を問う。(ちなみに、この部屋にはG6の代表たちは見当たらない。)
徹底的に悪の芽を摘むのか、それとも脅威の可能性には目を瞑るのか。前者はイーヴンフォールであるからこそ候補に挙げられる選択肢だろう。
PCがどうするかを決め、選択に応じたシーンを演出したらこのイベントは終了する。

▼エンドチェック
□ティーチャーの秘密を知った
□人質をどうするか決めた
□グリット1点を得た


イベント⑤

[アウトブレイク]

・登場PC:全員(任意)
・登場NPC:ティーチャー、バスカ
・場所:ディーバロン内部・戦闘指揮所
・イベントタイプ:バトル&チャレンジ

▼状況1
ついにキミたちはディーバロンの中心部、戦闘指揮所へやってきた。
壁を埋め尽くすほどの数の電子画面に映し出されるディーバロン内部や街の監視カメラの映像を眺めているのは、ザ・ティーチャーと未来人バスカだ。
「残念ながら、ここまでは前回と同じようですネエ」
「まだわからないさ。そうだろう、ヒーローになりきれぬ者たちよ」
バラバラの映像を映していた画面は一つの大きな画面に切り替わり、キミたちが大写しになる。
「よほど自信があるのか、それともキミたちにとっては人質などどうでもいいのか。‥‥お喋りなど退屈かね? ならばやることは一つだろう」
ティーチャーの言葉を合図に、数名のヴィランメンバーが現れる。戦闘開始だ。
前回と同じ
セカンド・カラミティの後の事件のことを指しているのか、それともバスカが見てきた未来の話をしているのか‥‥。

○戦闘データ

・勝利条件
 戦闘に参加しているすべての敵を倒す
・敗北条件
 PCが全滅する
・PC初期配置:エリア1、2
・NPC初期配置:エリア3(ヴィランメンバー×4)、エリア4(バスカ、ザ・ティーチャー)

○チャレンジ判定
ティーチャーを観察する

技能:知覚、追憶
修正:射程が1離れる事に-10%
回数:2回
PCは、どのエリアにいたとしてもチャレンジ判定を行うことができる。
このバトル・イベント中のチャレンジ判定は「タイミング:特殊(キミがティーチャーの攻撃によってダメージを受けたとき、もしくはキミがティーチャーにダメージを与えたとき)、代償:なし」のアクションとして扱う。

▼成功した
ティーチャーの動きに、キミは気づく。
奴は、彼は、ヒーローであるアポロ・ザ・ルクスだ。
キミが気づいたことに彼も気づいたのだろう。一瞬の隙をついてティーチャーとバスカは戦闘から離脱する。

▼失敗した
残念! 次の機会を伺おう。
勿論、リトライを失い、再度チャレンジ判定を試みてもよい。
このチャレンジ判定に成功しないまま戦闘が終了すると、クライマックスフェイズで敵対するキャラクターが強化される。

▼解説1
バトル・イベントだ。敵のデータはルールブックP187、191、218を参照してほしい。
また、チャレンジ判定に失敗したまま戦闘を終えた場合、ティーチャーはデラックスマンが演じていたものとし、ティーチャーの正体は彼から教えてもらうとよい。

教えてもらう
「俺はただの影武者だ‥‥。本物はお前たちのそばにいる。疑問に思わなかったのか? 何故ヒーローの動きが手に取るようにわかるのか。もう気づいただろう、ティーチャーはアポロ・ザ・ルクスだ。まさか奴がティーチャーだとは誰も思うまい‥‥」

▼状況2
戦闘が終わり、指揮所に動くものはキミたちのみ。
何故人々に認められたヒーローがティーチャーとなってしまったのか?
キミたちが首を捻りながら、ふと電子画面に目をやると街の各所が映し出されている元の状態に戻っていた。
その一つに、アポロの姿が写る。場所はG6本部、正面玄関だ。そのまま彼は誰にも怪しまれることなく、エレベーターに乗った。
考えていても仕方ない。今は彼を追うことが先決だ。

▼エンドチェック
□ティーチャーの正体はアポロだと知った
□PCたちがG6本部へ向かうことにした


イベント⑥

[光と影の間]

・登場PC:全員
・登場NPC:アポロ・ザ・ルクス
・場所:G6本部・最上階
・イベントタイプ:クエリー

▼状況
G6の本部ビル、最上階。
明かりのついていない部屋は外と同じように暗く、壁一面の大きな窓ガラスから時折報道ヘリのライトが差し込まなければ完全な闇となっているだろう。

そんな室内にアポロは立っていた。逆光でその表情はわからない。
「僕がティーチャーなんて、盲点だったかな? いや、そうでもないか。ヒーローのふりをしたヴィランなんていくらでもいる」
「キミたちはヒーローでありながら、ともすればヴィランだと言われかねないような振る舞いをする。僕は‥‥ある意味、キミたちと同じ立場に立とうとしているのかもしれない」
やがて彼は、今回の事件を起こした理由と目的について話し出すだろう。
「僕はサイオンとして旧人類からの迫害を経験した。だが、それは誰かが悪いんじゃない。‥‥言っただろう? 別の生き物を無理やり同じ場所で生きさせようとしたから起こった不幸な事故だ。でも、今更間違った方向に進んでいるとわかっても、世界の流れを変えるほどの強大な力なんてそう簡単には手に入らない」
「‥‥普通の、皆にはね。僕はそれが可能だった。だから、僕が変える。それでもヒーローとして、光の側からだけでは無理だ。僕はヒーローとヴィラン、どちらも演じる。双方の抑止力となって‥‥世界を、平和にするんだ」

▼解説
アポロが救いたい世界の中にはPCたちも含まれているため、できることなら戦わないで済む道はないかと最後の交渉に出る。
アポロが目指す平和な世界とそれを目指すに至った理由に対して、PCは何を思い、行動するかを応えるクエリーイベントだ。
PCが彼に問いを返すようであれば、イベント①も参照しながら適宜答えてやること。

応える
内容によってはアポロが納得することもあるだろう。 だが、彼は既に行動を起こしてしまったためもう後戻りができないのだ。
「もっと早くキミと出会いたかった」と彼がこぼした時G6の職員たちが部屋になだれ込み、そのままイベント⑦へ繋げると良い。

▼エンドチェック
□アポロに対し自分の答えを示した
□グリット1点を得た




決戦フェイズ

イベント⑦

[ヒーローの仮面]

・登場PC:全員
・登場NPC:アポロ・ザ・ルクス
・場所:G6本部・最上階
・イベントタイプ:バトル

▼状況
「どうしてわかってくれない!! 誰も人との違いで傷つかなくていいんだ!!」
「わかってくれ‥‥頼むから‥‥」
アポロが苦しげに呻いたとき、到着したエレベータが開き十数名のG6職員が駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか、アポロさん! 貴様ら‥‥ここで何をしていた!」
「大方、会議で決定した方針に納得できず、強硬手段に出ようとしたところをアポロさんに見つかったんだろう。お前たちはいつもそうだ、まるでヴィランじゃないか!」
口々にキミたちに敵意を投げつける職員たち。
それを遮って、前に進み出たアポロの目は冷たい決意に満ちていた。
「すまない。もう、僕は止まるわけにはいかない」

▼解説
アポロ及びG6職員との戦闘開始となる。
特殊ルール、配置エリアなどに注意して欲しい。
また、イベント⑤のチャレンジ判定に失敗していた場合はアポロの全てのエナジーに+10される。

○戦闘データ

・勝利条件
 すべての敵を倒す
・敗北条件
 PCが全滅する
・PC初期配置:エリア3、4
・NPC初期配置:エリア1(G6職員×4)、2(アポロ・ザ・ルクス)
・特殊ルール:サーチライト
 ラウンドの開始時に4面ダイスを2つロールする。
 出た目に対応するエリア2つはそのラウンド中[暗闇]エリアとして扱う。
・増援
 第2~4ラウンドの開始時、2体のG6職員が登場する(エリア1に配置)。



PC初期配置
通常であればヴィランが配置されるエリアだ。つまり、この戦闘においてヴィラン側はPCたち、というわけだ。‥‥それだけである。ロマンを感じて欲しい。
扱いについては単純に1が4、2が3と置き換えて通常のものと同じように処理する(隠密状態を解除したときもエリア1でなくエリア4に配置する、など)。

戦術

アポロは《シャイニングブラスト》と《カードボム》でライフの値が一番高いPCを攻撃する。自身のいるエリアが暗闇の場合は《マグネット・フォース》、PCのいる(に近い)隣接エリアが暗闇の場合は《ブラックウィング》を使用し、《ダークマスター》を試みても良いだろう(PCが回避のための判定が行えないパワーであることに注意)。
G6職員はアポロを《フレー!フレー!》と《ガード》でサポートする。エリア攻撃で一掃されることを恐れる場合は《殺到》でいずれかのエリアに移動するとよい。
また、アポロは死亡・絶望となった時、スパークのアクションとして《地獄へ道連れ》を使用する。

地獄へ道連れ
最後の攻撃を受け、窓を突き破って落ちるその時に手を伸ばしPCを掴む、など。
アポロ・ザ・ルクス

能力値    技能(成功率)
【肉体】40  射撃60% 生存50%
【精神】25  知覚35%
【環境】25  
エナジー
【ライフ】  20
【サニティ】 16
【クレジット】12
移動適正:地上
パワー
・シャイニングブラスト(R1 P116)
・カードボム(R2 P24)
・ダークマスター(〃)
・ブラックウィング(R2 P25)
・マグネット・フォース+(〃)
・地獄へ道連れ・改(R2 P106)
 このパワーの判定を「生存」に、効果の一文目を「キミがスパークを発生させた際のアクションとして使用する。」に変更する。

G6職員

能力値    技能(成功率)
【肉体】14  操縦30%
【精神】20  
【環境】16  隠密40%
エナジー
【ライフ】  8
【サニティ】 8
【クレジット】4
移動適正:地上
パワー
・殺到(R2 P128)
・フレー!フレー!(R2 P130)
・ガード(R2 P132)





余韻フェイズ

・全滅した
 キミたちは死んだ。そして、キミたちのいない新しい世界が始まる。
 完璧に区別された、誰も苦しまない平和な世界だ。

・勝利した
 アポロが死んだことはすぐに世間に伝わるだろう。ファクトに囚われていたはずのG6の代表も見つかり、事件は様々な憶測が飛び交う中収束していく。
 世間はアポロがティーチャーであったこと、キミたちがそれを倒したことを知る由もない。世界を守ったと賞賛されることもなく、キミたちが得たものは何もない。
 あるとすれば、「ヴィラン」をまた一人倒したという暗い達成感だ。

 それでも、キミたちはヴィランを倒し、自分の正義を貫く。
 キミたちは「ヒーロー」なのだ。
 ‥‥まだ、今は。

「Mask of Hero」FIN.


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