作られた英雄譚 (2017/07/21完成)(2017/07/25公開)

「作られた英雄譚」はプレイヤー3人用のシナリオだ。
想定されるプレイ時間はオンラインボイスセッションで4時間程度(未計測)。
また、このシナリオにはオリジナルのヴィラン組織スパイラル・スパイダーが登場するため、GMはそちらのページも参照しておく必要がある。

事前の公開情報

リトライ:3
初期グリット:3
チャレンジ:3
クエリー:3

エントリー1
帰り道、キミはふと立ち寄った居酒屋で気になる噂を耳にする。
なんでも、最近この辺りにやってきたヴィランくずれの連中が不穏な動きをしているらしい。
キミは見回りを強化しようと思い、早速明日から実行に移すことにした。


エントリー2(推奨:ジャスティカ)
キミは知人から、最近近所の少年がヴィランまがいの不良行動を取っているのだと相談を受ける。
どうやら少年の素行不良の原因は彼の父親にあるようだが‥‥? 街で恐喝行為に及んでいる少年と遭遇した時、遠くから轟音が聞こえてきた。


エントリー3
「ありがとうヒーロー!」キミはたった今、事件を解決したところだ。
感謝の声を受けつつその場を後にしようとすると、キミのファンだという青年が握手を求めてきた。
キミが如何に素晴らしいヒーローかを熱弁されいい気になっていると近くで轟音が!「出番だ、ヒーロー!」




シナリオ概要(GM用)
とある工場がヴィランに襲撃され、その被害は甚大だ。
単純な事件かと思えば、何やら裏に蠢くものの姿があるようで‥‥?
ヒーローたちは事件の黒幕に辿り付くことができるのか。

※備考
GMがPLにもう少し情報を与えたいのであれば、チャレンジ判定に使用する技能を推奨として教えてやるとよい。
また、決戦では<意思><知覚>が高めだと安心できるだろう。





導入フェイズ

[イベント1 ヴィランの噂]
・登場キャラクター:PC①
・場所:帰り道、とある居酒屋

状況1
キミは表の仕事、もしくはヒーロー活動の帰り道、呼び込みに釣られて居酒屋に入る。
それほど広くない店内、空いているカウンターへ通されたキミはまずは一杯飲むだろう。
すると、隣の客と店主の話が聞こえてくる。
「そういえば、最近こっちにやってきたヴィランの話、聞きましたか」
「いいや。また騒がしくなるってのか」
無愛想ながらも会話に応じる店主に、客は少し声を落として話を続ける。
「なんでも、旧人類の経営している会社や工場を襲って‥‥」

解説1
この店は、ヴィラン組織「スパイラル・スパイダー」の店舗の一つだ。
一部の客を除き、店員は組織のヘンチマン(バーテンダー&ウェイター)であり、店主は幹部の炭焼きジロウ、店主と話している客はオーナーのスピークイージーである。

状況2
キミが話に加わるか、聞き耳を立てていると目撃情報や特徴といった詳しい情報が手に入る。
「‥‥持たないものを狙うか、嫌になる」
「特に名もない、暴れるついでに小遣い稼ぎができればいいっていうならず者の集まりみたいな連中らしいんですがね。とはいえ、ヴィランはヴィラン。被害が出ないといいんですが‥‥」
しばらくは少し気をつけて、見回りでもしてみようか。
ヒーローであるキミはそう思うだろう。

解説2
この時点で彼らは工場長と契約している。
『工場がヴィランに襲われ、そこに偶然通りかかったヒーローの活躍により人的被害はなかったが備品は壊れてしまった』という八百長のヒーロー兼目撃者役として、PC①がその場に居合わせるようわざと情報を流しているのだ。

エンドチェック
□PC①が最近この辺りにやってきたヴィランくずれの連中の話を聞いた
□PC①が見回りを強化することにした



[イベント2 非行少年]
・登場キャラクター:PC②
・場所:喫茶店など/路上

状況1
キミは知人から「近所の少年が非行に走っている」と相談を受ける。
「悪さ自体は万引きや素行不良といったヴィランに比べればかわいいものなんだけど‥‥」
「前に一度注意したら軽く脅されてさ。怖くなっちゃって。そうしたら『アンタもどうせオヤジと同じだろ?』って。それに‥‥」
知人は言いにくそうに言葉を続ける。
「『力を持たない奴は、善人でいられない』、そうも言ったんだよ」
知人もその少年もキミと同じ旧人類、もしもそこに非行の理由があるとすれば放っておけない。

解説1
知人はPC②のヒーロー活動を知っていても構わないし、知らなくても問題はない。
少年は父親がヴィランと何らかの取引を行ったことを知っており、卑怯な父親と何もできない自分に幻滅し自棄になっている。 彼らに名前が必要になった場合、少年を『冬木ヒデオ』、父親を『冬木エイゾウ』とする。

状況2
少年をよく見かけると教えられた場所へ赴くと、集団で気弱そうな男性を取り囲んでいる少年たちがいる。
その中心となっているのは知人から聞いた特徴に合致する少年だ。
「ぶつかっておいてさ、謝罪もないわけ?」「えっ、その、だからすみませんと‥‥」「そうじゃないんだよなあ!?ハア?わかんない?キモチをさ、ホラ、形で示してよ」
PC②が割って入れば、彼らは興が覚めたというように連れ立って歩き出す。
その背を眺めていたところ、何かが崩れるような轟音がキミの耳に聞こえてきた。

解説2
PC②が少年と会話をしようとするなら『力を持っているものへの嫉妬』『弱いものは踏みにじられても仕方がない』といった気持ちをそれとなく伝えるといいだろう。
最後の轟音はイベント4に繋がるため、PC②がそちらに急行するところでイベントを終わる。
少年の様子を気にするなら、彼は自分の親の工場方面から聞こえてきた音に反応し、立ち止まってそちらを向いていることが分かるだろう。

エンドチェック
□PC②が知人から少年のことを相談された
□PC②が少年と出会った



[イベント3 熱烈なファン]
・登場キャラクター:PC③
・場所:路上

状況1
キミはたった今ヒーローとしての仕事を終えたところだ。
感謝の言葉や声援を背に、キミがその場から移動しようとすると野暮ったい服の青年が声をかけてきた。
「あ、あの!さっきの活躍を見ててッ!キ、キミのファンなんだッ!握手してくれないかい!?」
「あの事件の時の咄嗟の行動は凄かったよね!どうしてあんな危ないことができたのさ?!」
「もっと皆、キミっていうヒーローのことを知るべきだよ!」
彼は今までのキミの活躍もほとんど知っているようで、熱く名シーンを語って握手を求めてくる。
熱烈すぎるファンだが、惜しげもなくキミを讃えてくれる相手にきっと悪い気はしないだろう。

解説1
彼は「スパイラル・スパイダー」の幹部であるビッグ・ファン・ギークだ。
PC①が現場に来なかった時のために、保険として近くにいるヒーローを巻き込む役割を担っているのだが、彼は純粋にPC③に会えた喜びでそれを忘れているため、あまりこの解説は重要ではない。

状況2
彼は尚もキミの素晴らしさについて喋り続けようとするのだが、それを近くで聞こえた轟音が遮る。
何かが崩れたような重い音だった。耳をすませば、人々の悲鳴と恫喝の声も聞こえる。
ポカンとしていたキミのファンは、しばらくしてから我に返ってキミに叫ぶ。
「ヒ、ヒーロー!出番だよ!!」
言われずとも、キミは音の方へ向かって走り出すだろう。

解説2
轟音はイベント2と同じくイベント4に繋がるものだ。
ギークも轟音でやっと自分の役割を思い出したため、慌ててPC③をそちらへ誘導するだろう。

エンドチェック
□PC③がギークと会話した
□PC③が音の方へ向かった




展開フェイズ

[イベント4 ゴロツキを止めろ!]
・登場キャラクター:任意
・場所:町外れの工場

状況1
轟音が響く。町の小さな工場が煙を上げている。呆然と立ちすくむ人、やめてくれと懇願する人。
「やめるわけねーだろうがよ!ハハッいいストレス発散だぜ!」
「自分たちの大事な仕事場だろ!?守って見せろよ!!」
作業員たちが抵抗する力を持たないのをいいことに、ヴィランくずれのゴロツキたちは自らの能力を行使する。
こんな狼藉、見逃せるはずがない!

解説1
チャレンジイベントだ。PCがこのチャレンジを達成するためには、合計2回のチャレンジ判定に成功しなければならない。
また、ゴロツキたちは(酒場を通して)工場長と結んだ契約により作業員たちには手を出さない。物的被害を出し、ヒーローに軽くやられてから引き上げる予定になっている。
しかし、予定よりも多くのヒーローが駆けつけてしまったことで上手く逃げ仰せられず、後に八百長でない襲撃(イベント6)が発生することとなる。

チャレンジ判定
・判定①、②:白兵、霊能、射撃のいずれか
 判定に成功すると、ゴロツキたちを制圧し、追い払うことができる。

失敗:PCがこのチャレンジに成功しないまま展開フェイズを終えた場合、決戦フェイズにゴロツキ4体が登場する。

状況2
キミたちの力に気圧されたゴロツキは、倒れた仲間を見捨てて蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
幸いにもゴロツキたちは機械や製造品を壊すのに執着しており、人的被害は出なかったようだ。
「ああ、ヒーロー‥‥助かりました、なんとお礼を言ったらいいのか」
暗い顔で礼を言った工場長は、破損した機械類を見て何事か言いたげであったが、ふとキミたちの背後に視線をやる。
キミたちがつられて振り返ると、走ってきたのか息を切らせている少年の姿があった。
少年は工場長と目が合うと、複雑な、苛立っているような顔で走り去ってしまう。
「‥‥あれは、私の息子でしてね。‥‥私が不甲斐ないから、あんなになってしまった」
工場長はマッチで煙草に火をつけ、煙を吐き出したきり、口を噤んだ。

解説2
工場長は心の隅にヴィランに依頼をした罪悪感があるため、暗い顔で“予定通り”壊れた機械を見つめている。
少年は父に反発しているものの心配になって様子を見にきたのだ。無事だったことに安堵すると同時に、ヴィランの手を借りた計画が上手くいったことに苛立っている。
※このシーンで工場長が使ったマッチは伏線となるため、必ず描写すること。



[イベント5 不審な男]
・登場キャラクター:PC①
・場所:任意。PC①が1人になる機会があればどこでもよい

状況1
キミが1人でいると、見知らぬ男が話しかけてくる。
「さっきの活躍、見てましたよォ~。悪漢をちぎっては投げ、爽快でしたねェ~」
キミが男に誰だと聞いても、ただの野次馬だとしか答えないだろう。男は先程のキミの活躍を、やりすぎではないか、もう少し手を抜いて軽くいなしてもよかったのではないかと評してくる。
キミがいい顔をしないと、男はこう続ける。
「仕事をするのが悪いって言ってるわけじゃないんですよォ~?たださ、役割を越えたパフォーマンスは自分の首を絞めちゃうかもってさァ」
「必要悪っていうの?ホラさァ~‥‥ヴィランがいなけりゃ、ヒーローも必要ないわけですよねェ~~」
からかうように、男はキミの目を覗き込んできた。

解説1
男は「スパイラル・スパイダー」の幹部、影ツ木である。工場長との契約は彼が仲介したものであり、先程の一件も物陰から一部始終を見ていたのである。
ヒーローとヴィラン、正義と悪は表裏一体である、という考えについて、PC①に問いかけるクエリーイベントだ。
PC①はこの問いに答えてもいいし、答えなくてもよい。答えなかった場合、GMは状況2の描写を適宜変更すること。

状況2
「ふぅん‥‥まあ、それがアンタの信念なら貫けるところまで貫いてみるのもアリなんじゃないですかァ~」
キミの答えに、あまり興味がないといった様子だ。
「ただ、それで生じる不利益は甘んじて受けなきゃならないですよォ??」
「例えば‥‥邪魔されたのを逆恨みして仕返しにくるとか?本人に直接来たらいいけど、所在がわかんないと出会ったとこに行くしかないですよねェ~‥‥」
ゴロツキが暴れていた場所、キミが駆けつけ、ゴロツキを制圧した場所。そこには‥‥抵抗の術を持たない人たちがいる。
「急いだ方がいいかもよォ」
言うだけ言うと、男は去っていく。追いかけても、建物の影に隠れた次の瞬間、既にその姿はないだろう。

解説2
影ツ木はゴロツキの動向も知っているため、ゴロツキたちが再度工場を襲撃することをPCに仄めかす。
もしも工場長が殺されてしまうようなことがあれば、仲介料を受けとれず損をするのは自分たちだからだ。

エンドチェック
□PC①が影ツ木と会話した
□工場が再度襲撃されるかもしれないことを知った
□グリット1点を得た



[イベント6 ゴロツキ再来!]
・登場キャラクター:任意
・場所:町外れの工場

状況1
キミたちが工場を訪れると、少し前に見たことがある光景が広がっている。悲鳴と恫喝、破壊された工場。
しかし、前とは状況が違う。その人数を増やしたゴロツキたちは、明らかに作業員たちを狙っている。
作業員を攻撃しようとしたリーダー格の男に、工場長が必死で取り縋る。
「は、話が違うじゃないか!やめろ、皆を傷つけないでくれ‥‥!」
「うるせえな‥‥第一、先に契約を破ったのはお前だろ?仲間がパクられるなんて聞いてねえぞ!」
リーダーがうっとおしそうに工場長を蹴り飛ばすと、地面に転がった工場長とリーダーの間に少年が立ちふさがった。
少年の足は震えており、それを見たリーダーはニヤついた笑みで少年に向かって刃物を振り下ろす!
キミたちがそれを妨害すれば、待ってましたというようにリーダーは口角を釣り上げるだろう。
「仕返しに来てやったぜ‥‥ヒーローさんよ!」
二人の話の内容も気にかかるが、今はそれどころではなさそうだ。

解説1
チャレンジイベントだ。ゴロツキたちはヒーローに仕返しをするべく人数を集めて工場に戻り、鬱憤を晴らすために作業員たちを襲っている。ゴロツキたちを倒し、作業員たちを救うのがこのチャレンジの目的だ。
PCがこのチャレンジを達成するためには、合計3回のチャレンジ判定に成功しなければならない。

チャレンジ判定
・判定①:白兵、射撃、霊能のいずれか
 判定に成功するとゴロツキたちを倒すことができる。
・判定②:生存、または知覚
 作業員の手当、重傷者の発見ができる。
・判定③:科学、または操縦
 工場にある機械や薬品から発生するかもしれない二次災害を防ぐことができる。

このイベントでは、同一のPCが複数のチャレンジ判定を試みることはできない。また、判定順は問わない。

失敗:PCがこのチャレンジに成功しないまま展開フェイズを終えた場合、決戦フェイズでの戦闘中、グリットが使用できなくなる。



[イベント7 少年の思い]
・登場キャラクター:PC②
・場所:破壊された工場、または路上など

状況1
キミはぼんやりと座り込んでいる少年を見つける。そばに座ってやれば、ぽつりぽつりと彼は話し始めるだろう。
「うちさ、昔はヒーローの装備を作ってたんだ。俺たちは旧人類だけど、超人類と対等に付き合いができるんだってオヤジたちを誇りに思ってた。でも、セカンドカラミティで、お得意さんだった人たちが皆死んで‥‥」
「どんどん経営がうまく行かなくなって、オヤジは毎日酒ばっかり飲んで‥‥全部ヴィランのせいだ、旧人類は虐げられるしかないんだって」
「『力を持たない奴は、善人でいられない』。‥‥そう、オヤジが言ったんだ」
少年は父親がヴィランと思わしき男と契約を交わした現場を偶然見てしまったと言う。
誰にも言えず、かといって力のない自分ではどうにもできず。ずっと一人で重荷を抱えていたのだろう。
彼は悔し涙を流しながら、父と自分の罪を吠えるように叫ぶ。
「自分が行動しなかったのを自分じゃない誰かのせいにして、いけないことだってわかってるのに見て見ぬ振りをして、そんなの‥‥ヴィランと何が違うんだよ!!」
キミは、少年にどんな言葉をかける?

解説1
少年の本音に対し、PC②が自分なりの考えを伝えるクエリーイベントだ。
少年が見たヴィランと思わしき男は影ツ木である。詳しい内容は聞こえなかったものの、少年は父が何らかの書類にサインをし、男に前金としていくらかの金銭を渡したところを目撃した。その後少年は父親に取引について問い詰めるも、返ってきたのは「力を持たない奴は、善人でいられない」という絞り出したような一言だった。
誰かに相談しても、父親もヴィランと同罪だと叱責され、もっと悪ければ工場で働く作業員たちまで謂われのない中傷を受けるかもしれない。少年は行き場のない感情を抱え、自棄になって不良の真似事をしていたのだ。

状況2
キミが少年に言葉をかけると、少年はしばらく黙っていた後、立ち上がってどこかへ行ってしまう。
少年は何も言わなかったが、キミは彼がキミの言葉をしっかり受け止めたことがわかる。
自分なりの答えを出すのに少し時間が必要なだけで、きっともう彼は大丈夫だろう。

解説2
シナリオ上重要ではないが、この後少年は不良仲間の元へグループを抜けたいと伝えに行った。

エンドチェック
□父と自分の罪に悩む少年に自分なりの言葉をかけた
□グリット1点を得た



[イベント8 取り調べ]
・登場キャラクター:任意(推奨:全員)
・場所:G6、または警察の取調室

状況1
ガーディアンズ・シックスから、引き渡したヴィランのことで話があると呼び出されたキミたち。
取調室の様子をマジックミラーで見ながら、職員は困った様子で話し出す。
「えー、彼らはスカーベンジャーズ。旧人類を狙って暴行、強盗などを行うヴィラン集団です。どうやら地元で暴れすぎて立ち回りにくくなりこっちにやってきたようですね。カモを探していたところ、経営難に悩む工場長さんに出会い、ヴィラン被害で降りる保険金(※1)を折半することを条件に一芝居打ったと。もうお帰りいただきましたが、これはさっき話を聞いた工場長さんの証言とも一致してます」
「ただ‥‥聞けば奴等、この町に今日来たところだとか」
「初めて訪れた町で、その日のうちに八百長を必要とする人に出会って契約、すぐ行動に移したなんて、都合が良すぎませんかね?」

解説1
チャレンジイベントだ。ゴロツキたちの背後に何者かがいると気づいたPCが、その手がかりを手に入れることを目的とする。
地元のワル程度のヴィランであるゴロツキたちは、地元ではしゃぎすぎて彼らよりも巨大なヴィラン組織に目をつけられ、大手を振って歩けなくなった。そこに目をつけ、今回の契約を持ちかけたのがスパイラル・スパイダーである。その契約があったため地元からこちらにやってきたのであり、「その日のうちに契約した」わけではないのだが、仲介者の存在を話さないよう口止めされているため嘘をついているのだ(工場長も同様)。

PCがこのチャレンジを達成するためには、合計3回のチャレンジ判定に成功しなければならない。
(※1)ヴィランが蔓延る世界なので、きっとヴィラン被害に対する保険のようなものもあるのではないだろうか。作者の想像の産物である。

チャレンジ判定
・判定①:知覚
 机の上に並べられたゴロツキの持ち物の中に、どこかで見た覚えのあるマッチを発見する。
・判定②:追憶
 工場長がイベント4で使っていたものと同じだと思い出す。
・判定②:交渉
 ゴロツキを問い詰め、工場長からの依頼を仲介された酒場のことを話させることができる。

失敗:PCがこのチャレンジに成功しないまま展開フェイズを終えた場合、決戦フェイズでの戦闘に時間制限が加わる。



[イベント9a ヒーローの存在理由]
・登場キャラクター:全員(PC③のみでも構わない)
・場所:破壊された工場、もしくはその近くにある工場長の家など

※イベント開始前に
[イベント9]はふたつに分岐している。
こちらのイベントは[イベント8]のチャレンジに成功していた場合のクエリーイベントだ。

状況1
確信を得て工場へ戻ってきたキミは、工場長と話し込んでいる男の姿を目撃する。工場長の手には厚みのある封筒が握られている。
「お気の毒ですけどォ、ここにも予測不可能な事態が起こった場合の責任は取りませんって書いてありますのでェ~‥‥約束の金額、払って貰わないと困りますよォ」
「しかし‥‥入るはずだった保険金は、計画がバレたせいで入らなくて‥‥これを渡してしまったら、本当にこの工場は‥‥」
工場長は必死にいくらかでも金額をまけてはくれないかと頼むが、男に聞く気はないようだ。

解説1
工場長のところへ、影ツ木が契約金の残りを受け取りに来ている。
同行していれば、PC①には見覚えがあり、PC②は少年から聞いたヴィランらしき男が彼だとわかるだろう。

状況2
キミたちが二人に近づくと、男は嫌そうな顔をしてキミたちの方に体を向ける。男にゴロツキと工場長を仲介した組織の話をすれば、あっさりと自分たちがそうだと認めるだろう。
しかし男は、あくまでも人の希望を叶えただけで自分たちが責められる謂れはないと反論する。
「自分たちは困ってる人の手助けをしただけですよォ。ねえ、工場長サン?保険金で、工場を立て直したかったんですよねェ~‥‥」
「そうだ‥‥上手くいけば、俺の工場は、作業員たちは仕事をなくさずにすむはずだった‥‥あんたらが余計なことをしなければ、保険金で、工場は助かったのに‥‥」
工場長は、手元の封筒を虚ろな目で見つめ、それを握り締める。ヒーローに向けられた非難の言葉を聞くと、男はPC③に話しかける。
「だってさァ。おかしいなァ~?人を助けるために、感謝されるはずのことをしたのに、アンタ、要らないってさァ~‥‥」
助けたはずの相手からの拒絶に、キミは反論できるだろうか?

解説2
影ツ木は自身の逃げ足に自信があるが、3対1では流石に逃げきれないので、せめて2対1にしようとPC③の心を折りにかかっている。
PC③のエントリー時の話はギークから聞いているため、PC③がもっとも揺さぶりやすいだろうと考えたのだ。

状況3
キミが工場長を諭すか、それでも自分の信念を曲げないことを示すと、影ツ木は降参と言うように両手を上げる。
「わかった、わかりましたよォ‥‥これだからヒーローはさァ‥‥」
「オレたち‥‥スパイラル・スパイダーの本拠地が知りたいならいくらでも教えてあげますよォ~」
本拠地、とあるビル内部のBARの場所を知ったキミたちは、最終決戦のためにそこへ向かうことになるだろう。

解説3
逃げきれないと悟った影ツ木は組織よりも自分の身の安全を重要視し、嘘をつくこともなく情報を渡す。
その後の処遇をどうするかはPCたち次第だ。

エンドチェック
□PC③がヒーローの存在理由/在り方などについて自分の考えを示した
□影ツ木から組織の場所を聞いた
□グリット1点を得た



[イベント9b 偽物の名声]
・登場キャラクター:PC③(+任意)
・場所:路上など

※イベント開始前に
このイベントは[イベント8]のチャレンジに失敗してしまった場合のクエリーイベントだ。

状況1
ゴロツキから情報を得ることに失敗したキミが、少しでも手がかりは残っていないかと工場へ向かっていると途中で聞いたことのある声に呼び止められる。
「また会ったね!ヒーロー!」
そこにはキミの熱烈なファンがいた。工場に急行する前、キミをベタ褒めしていた青年だ。
「どうしたのさ?なんだか浮かない顔だけど‥‥ヒーローがそんな顔してちゃ皆不安になっちゃうよ!」
工場で起こった2件の騒ぎも見ていたようで、やはりキミの活躍をオーバーに語ってくれるだろう。
しかし、その後に彼が言った言葉は、耳を疑うようなものだった。
「大丈夫!今回は観客が少なかったけど‥‥キミの活躍の場ならボクがまた作ってあげるよ!」
「今度はもっとキミが目立てる‥‥そうだなあ、ビルを丸々一個使った立てこもり事件なんてどうかな!?」
笑顔で『キミを有名にする』計画を話す青年の様子に、キミは気づく。
彼が工場の近くでキミに話しかけたのは偶然ではない。今回の襲撃の裏側に、関わっていたに違いない。

解説1
PC③がギークと再び会い、自分の活躍が用意されていたものであったと知るクエリーイベントだ。
目の前に現れた手がかりを逃してはならない。PCはギークから事件の黒幕である組織について知る必要があるだろう。

状況2
キミが申し出を断ると、ギークは予想外の反応だといったようにキョトンとした顔をする。
黒幕について問い詰めれば、少し考えてから口を開くだろう。 「ボクは大好きなヒーローたちの活躍をもっと見たい。だから‥‥」
ギークは、とあるビル内部のBAR――スパイラル・スパイダーの本拠地の場所をキミに教える。
「ヒーローが僕らを止めたいっていうなら、僕に協力しない選択肢はないんだ!」

解説2
ギークは根本的なところで話し合いが通じない相手だが、ここでは彼の行動方針故にPCは情報を手に入れることができる。
この後の戦闘に参加するつもりはないようだが、PCがBARへ向かおうとするなら観戦のためについてこようとするだろう。
放っておくも、警察に突き出すもPCの自由だ。

エンドチェック
□PC③が偽りの名声を与えられようとしていたことを知った
□ギークから組織の場所を聞いた
□グリット1点を得た




決戦フェイズ

[イベント10 黒幕をぶっ倒せ!]
・登場キャラクター:全員
・場所:とあるビル内部のBAR

※イベント開始前に
次の「状況」はPCが全てのチャレンジ判定をクリアした場合のものである。リトライが0未満になり、やり残したチャレンジ判定がある場合は適宜状況の描写を変更すること。「状況」と「戦術」にある変更例を参考にするとよいだろう。

状況
キミたちはスパイラル・スパイダーの本拠地に乗り込んだ。
開店前の店内はがらんとしており、店主と思われる女性がキミたちに目を向ける。そして、PC③に走り寄ってくる青年。
「‥‥口の軽い部下には、後ほど再教育を行わなければなりませんね」
「やっぱり!キミならここにたどり着くと思ったよ!さっすがヒーロー!!」
女性は、ワインを3人分グラスに注ぎ、キミたちに用件を尋ねる。
「私はミストレス・フルボディ。このBARの店長を任されています。大体察してはいますが、確認のために用件を伺いましょう」
キミたちが戦う意思を示せば、フルボディは店の奥に視線をやる。
「普段でしたら、私の一存で退店願うところですが‥‥本日はオーナーがいらっしゃるので」
店の奥には、BARに似合わぬ作務衣の老人と、客の席に座っているコートの男性がいた。
PC①には見覚えがある。キミが見回りを強化しようと思ったきっかけ、ヴィランの噂話をしていた二人だ。
「直接ヒーローを応対するのは私共の経営方針にあまりそぐわないのですが‥‥」
「せっかくここまでたどり着いてくださったお客様です。その執念を評して特別にお相手しましょう」
男性が立ち上がり、その目がキミたちを捉える。BARの空気が一変した。
「もし、敵対の意思がなくなればいつでも仰ってください。優秀な人材は私共のネットワークに有用ですから」
悪に屈することはできない。何故なら、キミたちはヒーローなのだから!

解説
敵はスピークイージー、ミストレス・フルボディ、ビッグ・ファン・ギーク(影ツ木)、炭焼きジロウの4人だ。
PCはエリア1、もしくは2に配置。ギーク(影ツ木)とジロウはエリア3、スピークイージーとフルボディはエリア4に配置する。

戦術
スピークイージーは《催眠術》でPCのサニティを奪い、機を見て隠密状態になり《W.E.B》を使用してPCの妨害・仲間の支援を行う。代償は大きいが、《ハートブレイクノイズ》でPCの支援を封じておくのもヴィラン側を有利にするだろう。
フルボディは《ウォーターカッター》でPCに確実にダメージを与える。射程が届かないならば《店主命令》でPCを移動させるもよし、仲間を移動させて攻撃させるもよい。
行動順ロールを行った際、彼女が最も低い出目(同値のPCがいればその限りでない)を出したなら《お客様の対応を》を使用できることを忘れないように。
ギークは、まず飛行状態になり、攻撃対象にならないように移動するかまたは基本攻撃を行う。仲間のライフが少なくなってきた場合や、PCの臨死状態を防ぎたい場合に《ファンからの贈り物》を行うため、できるだけ長く生き残るように動かすとよい。
(影ツ木は《マキビシ》でPCの攻撃を防ぎつつ、ダメージを与えていく。既に相手が狼狽している場合は基本攻撃も選択肢の一つだ。ここぞという判定は《タンデン呼吸法》を使用してから行うとよいだろう。)
ジロウはパワーの射程がどちらも0のため、PCか仲間と同じエリアにいるように動く。ただし、ライフが高いわけでもないためパワーを使用する前に倒されないよう気をつける必要があるだろう。
フルボディがバーテンダー&ウェイターを出現させた場合、彼らはPCと同じエリアに移動し、《ウェルカムドリンク》を振舞う。

変更例(クリックで展開)





余韻フェイズ
ここに書かれた結末は一例に過ぎない。
GMはヒーローたちの活躍・希望に応じて彼らに相応しいその後を描写してほしい。

PC①の結末
酒場での決戦から数日後。街を歩いていたキミは、闇に溶けるように潜む蜘蛛を見つける。
逃げおおせたスピークイージーの一部だ。彼はキミの勝利を湛えつつ、現実を語る。
「貴方が死力を尽くして悪から守った人々も、それが自分の利益になるとわかれば自ら悪を求める」
「貴方の行為は報われない、貴方の行為はただの自己満足なんですよ」
キミの行いは虚しいものなのだと、蜘蛛は囁きかけてくる。
キミは、キミの心はなんと答えるだろう?


PC②の結末
工場が営業を何とか再開したと聞いて、キミは様子を見にやってきた。
すると、そこには大人に混じって油まみれで働く少年の姿がある。
キミの姿を見つけると、少年は気まずそうに、しかしはっきりと感謝を述べる。
「オレ、いつか‥‥アンタみたいなヒーローになるよ」
少年はキミの目を見て、キミが示した未来への希望を語るだろう。


PC③の結末
今日も今日とて、キミは事件を解決した。
無くならないヴィランによる事件に辟易しつつも、キミは救った人から感謝の言葉を伝えられる。
「ありがとう‥‥!あなたの名前は‥‥?」
確かに、多くの人にキミの名前が知られ、感謝され、脚光を浴びることは嬉しいことだ。
しかし、それは『誰かの手で作られた物語によって』ではならない。
キミの手で、キミが作るキミの英雄譚こそ、ヒーローにふさわしい物語なのだ。





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