よい航海を (2015/10/11完成)(2016/11/23公開)

はじめに

このシナリオは『クトゥルフ神話TRPG』に対応し、『ラヴクラフトの幻夢境』を参考に制作されたものです。
舞台は現代日本(2015年想定)、探索者たちがそれぞれの事情でとある島を訪れようと船着場にやってきたところからスタートします。
<回避><目星><水泳>技能を持った3、4人の探索者向けにデザインされており、プレイ時間は4時間程度でしょう。

また、このシナリオはロスト率・殺意が高く、随時イベント処理などが発生するため初心者のPL、KPには非推奨です。
加えてどうあがいても後味が悪くなるシナリオなので、心が優しすぎる人にもオススメしません。


KP情報

シナリオ背景

蟻鹿島(ありがとう)と鹿馬湾(かまわん)を結ぶ海域には、古くからドリームランドへと繋がる道があった。運悪くそこを通る船は皆行方不明となり、それに困っていた船乗りたちは長年の研究の末、そこを根城にしていた神話生物――クラウドビーストたちと契約を結ぶことに成功する。
契約の内容は『30年に1度、印のある決められた船に乗った者の肉体と魂を生贄として捧げる。その代わりに他の船に手出しをしないでほしい』というものだ。それに従い、人々は1925年から蟻鹿丸を出航させてきた。しかしこの事情を知る者は各船長のみで、乗組員はそれを知らない者がほとんどだった。
霧の出る日は『許可のある船以外』出航してはならない。周辺の船乗りたちはそれだけを伝えられている。罪のない者たちの命と引き換えに、この海域の安全は守られているのだ。

そして、3度目の生贄を捧げる日。
探索者たちは蟻鹿丸に乗り込むこととなる‥‥。


NPC/神話生物データ

同行NPC①:山鹿 透也(やまが すきや)
 STR18 DEX10 INT12
 CON13 APP9 SIZ15 EDU9
 POW11 SAN50 耐久14
 /特記技能
 応急手当70、天文学40

本土の中年、海より山派。友人の手伝いで乗船したため詳しいことはほぼ知らない。
船にはすこぶる弱く、船酔いのため応接室で休みに来て探索者たちと遭遇する。

探索者が耐久ダメージで死にそうな場合など、代理死亡要員として使用。
吐きたがりトイレへ行くなどして、さちとの遭遇を誘導してもいいだろう。


同行NPC②:海野 さち(うみの - )
 STR7 DEX17 INT13
 CON11 APP14 SIZ3 EDU6
 POW9 SAN34 耐久7
 /特記技能
 精神分析70

本土で父と暮らす小学三年生。島にいる母に会うため船にこっそり乗り込んだ。
トイレでの遭遇時不定の狂気(制御不能のチック)に陥っており、自分からは出てこない。
一緒に行動し、気にかけてやると脱出時に役立つ情報を教えてくれる。

覚醒の世界では既に死亡しているがそれに気づいておらず、お守りに精神のみが宿っている。
「買ってもらったばかり」のアラレちゃん(もしくは一昔前のアニメ)の服を着ている。


確定死NPC:船員たち
必要になった場合、以下の名前を使用する。

 船長:真黒(まぐろ)‥‥この船の使命を知っていた人物。スプラッタ。
 1の部屋:三馬(さんま)‥‥フラグ人間。部屋にて毒殺。
 2の部屋:佐原(さわら)‥‥トイレで半裸で失血死。かわいそう。
 3の部屋:白洲(しらす)‥‥綺麗好き。皮肉にも掃除用品で呼吸困難・中毒死。
 4の部屋:佐波(さば)‥‥‥漫画が大好き。ビビ派。
 5の部屋:鈴木(すずき)‥‥山鹿の友人。佐波と共に雲に吸収された。


敵性NPC:青年
 STR?? DEX?? INT??
 CON?? APP12 SIZ13 EDU??
 POW?? SAN?? 耐久??

船着場で困っていた探索者が声をかけることになる青年。

第一蟻鹿丸の犠牲者であり、雲の獣と同化し手先として使われている。
探索者を乗船させる前の時点で一人船員を殺害し、その服を奪って成り代わっていた。
青年を疑って調べるなら、船員の部屋で乗組員の写真を見つける、もしくは山鹿の口から若い船員は乗船していないことを知ることができるだろう。


神話生物①:小型の雲の獣(幻夢境106P参考)
 STR該当せず CON5 SIZ10
 INT1 POW11 DEX12 耐久力39
 /技能
 噛み付き 40% 1D3+1
 触肢 25% 噛み付きダメージ1D6UP
 /装甲
 なし。貫通する武器はダメージを与えない。
 毎ラウンドSIZと同じ値の耐久力を回復する。
 (触肢の形成にかかる耐久力は今回は無視。石を使った場合のみ消滅。)
▼戦闘時処理(クリックで展開)


神話生物②:深きもの
 STR14 CON10 SIZ16
 INT13 POW11 DEX10 耐久力13
 /技能
 鉤爪 50% 1D6+1d4

船の周囲を常に取り巻き、雲の獣のテリトリーである船から逃れ出たものを狙うハイエナ的ポジション。
今シナリオ内では彼らとの戦闘は想定していないため、もしPLが水中で彼らと戦おうとするなら勝ち目がほぼないだろうと忠告しやめさせること。


キーパリングについての補足

シナリオを使用する前にご一読ください。▼クリックで各項目が開きます。
▼注意事項

▼情報の不足



本編

導入

探索者は鹿馬湾(かまわん)から蟻鹿島(ありがとう)への連絡船乗場で途方にくれている。
洋上に薄い霧が出ているらしく、突然連絡船が欠航となったのだ。
どうしても今日行かなければならない用があり、頭を抱えていた探索者たちの目の前に出港準備をしている船が一隻。
荷物を運び入れている船員たちの一人、若い船員に声をかけて事情を話すとちょっと待っていてくれと中に消え、しばらくして船長の許可が取れたと船内へ案内してくれる。入ってすぐ、応接室と書かれたプレートの部屋へ探索者たちを案内した船員は「航行中はこちらも忙しいのでこの部屋の中で我慢していてください」と告げる。乗せてもらった身、探索者たちは了承するだろう。
天気が悪く、速度を落とすため島までは三時間ほどかかると告げられたが、その程度大人しくしていられないほど子供でもない。
狭くはないが、決して広いとも言えない船室の中、自己紹介や当たり障りのない会話などで探索者たちは時間を潰すことになる。

そして、出航からだいぶ経った頃。
唐突に、船室のドアが開いた。胸の辺りを抑えた、船員と思わしき顔色の悪い中年男性が入ってくる。

「‥‥誰だ?お前ら、一体、」
男が言葉を紡ぎ終える前に、船が大きく揺れ、全員が体制を崩しかける。後方から異音。
ゆっくりと、スクリューの回転する音、波をかき分ける音が消え、船は波に揺られる鉄の箱と化した。

逃げ場のない洋上で起こった明らかな異変に<SAN0/1>、ここから探索を開始する。

※▼制限時間について


イベント

時間経過で発生

▼残り2時間

▼残り1時間

条件で発生

▼山鹿との会話(条件:探索開始時)

▽山鹿襲撃(条件:山鹿を一人で行動させる)


▼さちの歌(条件:さちに対して好意的に接する、気遣うなど)

▽さちの鞄の中身(条件:鞄を貸してもらう/さちがいなくなる)

▽さちのお守り(条件:さちの様子を気にする、積極的に関わる)


▽山鹿の犠牲(条件:海のものを呼ばずボートで逃げようとする)

▽さちの真実(条件:さちに自分が死んでいることを教える)


▼犠牲の選択(条件:操舵室で甲板に青年の姿を見た後、甲板へ向かう)


▽爆破準備(条件:PLが船を爆破させるための相談を行う)


▼脱出準備(条件:甲板で呪文を唱える)

▼脱出決行(条件:海のものを呼び、命令を済ませて船から逃れる)



[応接室]

しっかりとした木の机と椅子、壁には時計、その下に船内の見取り図が貼られている。
波に反射する光にカーテンを引いてしまったが窓もあり、上はガラス、下は木の引き戸がついている棚も備え付けられている。

■見取り図

上記画像をPLに渡す。
下の切れている部分を気にする発言があった場合は<目星>を許可。
途中で切れてしまっているが、まるで元からこの形にするために切ったような綺麗な切り取られ方に見える。

□カーテンのしまった窓
カーテンを開けると、船の周りに霧が出ており視界が悪いことがわかる。
<目星>に成功すると水面で何か影が跳ねた気がする。
出目がよければ霧の中に太いロープのようなものが見えた気もするかもしれない。

□机
椅子、上に置かれているペン立てなどは動かせる。
机は床に固定されている。

■時計
確認すると、出航から3時間ほど経っており、また、時計の針が逆回りに回転していることに気づく。
船にある時計は全て同じ処理だが、探索者と山鹿の時計は通常通りに時間を刻んでいる。
なかなか時計を確認しない場合、部屋を移動する度「この部屋にも時計がありますね」と誘導。

□棚
上のガラス戸を通して見えるのは数冊のマニュアルだ。
<目星>で非常時に対応したものを見つけることができる。
船員はまず非常事態の原因を突き止め、無線などで連絡をとり船長の指示で‥‥などと書かれている。
船が航行続行不可能となった場合は救命具をつけ、折りたたみボートで脱出するようにとの記述があり、その装着や組み立て方法を覚えることが出来る。

また、下の引き戸を開けると救命具が[探索者の人数÷2・端数切捨て]着入っている。
装着した場合、水中での行動技能に+20、平常では行動技能に-10(装甲1)となる。



[風呂・水回り]

洗面台、洗濯機のある狭い空間。左手には扉があり、恐らく風呂場だろうと察しがつく。

□洗面台
鏡のついた棚があり、そこを開けると歯ブラシやコップなどが収納されている。

□洗濯機
中に何か入っているものも、動いているものもなく綺麗なものだ。
そばには空っぽになったアリエールの容器と少し残っている漂白剤(ハイター:塩素系)がある。

■風呂場
ガラスの戸を開けると、蓋のされた浴槽がある。
蓋を開けるとそこには薄く張られた冷たい水と、その中に半身を浸した人間がいた。
船員服を着た彼は、眠っているようにも見える。
しかし体に巻きつけられた縄、薄く開いたまま動かない目と口に、その命は奪われた後だと嫌でもわかるだろう。
<SAN0/1D3>

SANチェック処理後<強制聞き耳>を行わせ、成功すると刺激臭がすることに気づく。
加えて<知識><化学>を行うとこの臭いは塩素ガスのものであると理解できる。
成否に関わらず、近くにいる探索者は中毒状態に陥る。
※中毒状態について


□死体周辺
死体自体は<医学>で調べることができる。どうやら呼吸不全で亡くなったらしい。
目、皮膚などに損傷が見られ、嘔吐跡がある。呼吸器の損傷が最も重大なもののようだ。
更に死体が浸かっている液体を気にするのであれば<薬学><化学>に成功すると水ではなく何らかの薬品類だとわかるだろう。
また、<目星>か宣言で死体の服から3と書かれた鍵を見つけることもできる。



[トイレ]

扉を開けた瞬間、鼻を突く、鉄錆の臭い。
探索者たちの目は、手前の個室が半開きになっており、その床から赤いものが流れ出てきているのを捉える。
その個室以外にも、この空間には奥の個室と掃除用具入れがあるようだ。

□手前の個室
半裸の男がそこにいた。
シャツと下着のみを身に付け、トイレにもたれかかるようにして座らされている。
一目見て分かる、致死量の血を首の傷から垂れ流し、男は絶命していた。<SAN1/1D3+1>

男の様子を<目星>で見ると困惑と恐怖の表情を浮かべており、何やら鋭い刃物で切りつけられた傷を発見できる。
<医学>の知識があるならば死後3時間以上経過していることもわかるだろう。
個室内を<目星>で探すと、床にちぎれた船員服のボタンが落ちていることに気づく。
(※探索者たちが乗船時に声をかけた若い船員(青年)を気にするならば、<アイデア>などで彼の船員服は一つボタンがちぎれていたと思い出せるだろう)

■奥の個室
扉には鍵が掛かっている。声をかけても返事はなく、<聞き耳>などを行うと衣擦れの音と押し殺した呼吸音が聞こえる。
上から覗き込む、無理やり扉を開けるなりして中を確認すると小さな体をぎゅっと縮こませカタカタと震える少女を見つけることができる。
彼女は不定の狂気に陥っているため(同行NPC②:海野さち参照)話を聞くには<精神分析>その他RPが必要となる。無理やり連れ出そうものなら悲鳴をあげて逃げ出そうとし、これ以降の交渉に難が発生するだろう。

□掃除用具入れ
モップ、バケツなどの掃除用具は一式揃っているようだ。
<目星>や洗剤を確認する宣言でサンポール(酸性)が見つけられる。



[ダイニング]

他の部屋や通路と比べて開放的な空間。人影はなくがらんとしている。
食事スペースにはテーブルが並んでおり、キッチンは対面式ですぐ料理が渡せるように設計されたもの。
また、甲板へ続くであろうドアも見える。

□テーブル
大きめのテーブルが3つ。缶切りや箸など出しっぱなしのものもある。
<目星>で灰皿のそばに使いかけのマッチかライターを発見しても良い。
(壁には時計がかかっている)

■キッチン
あまり長い航海を想定していないらしく、小型の冷蔵庫が一つ。食器類が入った棚は壁に固定されている。
流しにはスポンジと洗剤、コンロの上には流し下のスペースに入らなかったと思わしき鍋やフライパンが放置されたままになっている。

冷蔵庫には水のペットボトルや瓶のジュース、缶ビールなど飲み物が大量に入っているが食べ物はない。
食器棚に変わった点はないようだ(探索者の欲しがるものでここにありそうなものなら入手できる)。
流しの水道からはきちんと水が出る上、コンロも難なく火をつけられる。
また、洗剤はマジックリン(アルカリ性)を使っている。

流し下のスペースには大きな鍋や包丁が収納されている。
更に<目星>に成功すると、いくつかの缶詰を見つけることができる。
鯖、焼き鳥、ポークビーンズ、クラムチャウダーなどそのまま食べられるものがほとんどのようだ。
▼缶詰を食べる




[甲板]

昼間のはずなのだが、霧の向こうの空にはうっすらと星が出ている。
甲板に視線を下げるが、いくつか機械がある程度で特に目立ったものはないように見える。
▼浮遊する碇(※初めて甲板を訪れた際のみ発生)


□空を見上げる
<天文学>の知識がある場合、星の並びや位置を見るにこの空がどうにもおかしいことがわかる。 この時期に見える星座ではないものが混じっており、まるで一部だけ異世界に取り込まれたような感覚に陥る。<SAN0/1D2>
また、洋上に目印になりそうな島などは見えないが、星ならば目印になるのでは?と思うこともできるだろう。
これ以降空の星を確認すると、ゆっくりとだが確実に一定方向へ流されていることが分かる。

□甲板に目をやる
ロープとそれを巻き取るための機械が数個、非常用と思わしき浮き輪が二つ。
機械を使えばロープにボートなどをくくりつけて海に下ろすことなども十分可能そうだ。
ちなみに、先ほど壁に突き刺さった碇は外せそうにない。
浮き輪は海上で使用すると<水泳>に+10の補正が加わる。

□海を覗き込む
応接室や船底で船の周りを泳ぐ何者かの姿を見ていない場合、ここで情報を出して不用意に海へ逃げるのも危険ではないかと警告する。



[荷物庫]

雑多に荷物が積み込まれている。
天井から電気の紐が垂れ下がっているが、それは引かれておらず中は薄暗い。

※電気の紐を引く

落ち着いてから荷物庫内を<目星>で探せば、たくさんの荷物の中から役に立ちそうなものを見つけられる。
折りたたみ式ボートにオールが二つ、魚を取るための網(棒のついたタイプ)、クーラーボックスなど。
また、簡単な応急手当セットも手に入れることができる。



[二階・階段]

二階に上がった時点で<目星>を行わせ、成功した探索者はごくわずかな異変に気づくことができる。
うっすらと視界が白く、どこかから外の空気が漏れ入ってきているのではないかとも思うだろう。
(※残り2時間までに穴を探して塞げば小型の雲の獣の襲撃イベントは発生しない)



[操舵室]

中から鍵がかかっているようだ。鍵を手に入れるか、<鍵開け>で入ることができる。
大きな船であれば操舵室、海図室、無線室に分かれているのだが、この船は全てがこの部屋に集約されている。
ハンドルや計器を統合してコックピット化した操縦席、海図など書類がまとめられた四角く高い机。
フロントウィンドウから見える視界は白いもやで快適とは言えない。
‥‥そして、それらのそば、あるいはそれにひっかけたようにして、服が二着落ちている。
探索者に<アイデア>を振らせ、成功した場合「それを着ていた人間がそのまま服を残して煙のように消えてしまった」と思い当たってしまい<SAN0/1D3>の処理を行わせる。

□二着の服
服を調べるとそれぞれのポケットから4の鍵と5の鍵を手に入れることができる。

□操縦席
ハンドルやレバー、スイッチなどの機械がまとめられたコックピット。
大型のコンパスはぐるぐると回転しており、方位がさっぱりわからない。
機械系の技能を持っている、もしくは船に詳しい探索者は適当だと思われる技能に成功することでエンジンは動いており、ここにある機械たちにも何ら問題はないことがわかる。

また、ここを調べた探索者は<アイデア>で探索開始時に聞いた異音を思い出すことができる。
音は後方から聞こえたが、スクリューはどうなっているのだろうか?

□四角い机
上に乗っている書類は蟻鹿島や鹿馬湾周辺の海図だ。
机の下にはあまり開閉されていないように見える金庫が設置されている。
▼金庫


□フロントウィンドウ
うっすらと甲板の様子が伺える程度で、進行方向の海上に見えるものはない。
<目星>に成功してしまうと下の甲板に人影を見つける。
船員のようだがはっきりとは見えず、そのうちにすうっと霧に紛れて見えなくなってしまう。
(※以降甲板に向かうと「イベント:犠牲の選択」が発生する)



[船長室]

耐久性に優れた、ちょっとやそっとでは壊れなさそうなドアだ。
ドアノブをひねってみてもドアは開かない。
鍵穴がついているが、回した感じは鍵が掛かっていないようにも思える。
▼船長室に入る方法


気を取り直して部屋を見回すなら、ひときわ目を引く執務机、そのそばに本棚、ベッド、テーブルが置かれていることがわかる。
内装は他の部屋に比べて整っているが、家具類はさほど良いものでもなく、一言で言えば古いものだと感じるだろう。

■テーブル
スクラップブックが何冊かあり、新聞記事がたくさんまとめられている。
記事は古いものから最近のものまで、鹿馬湾、蟻鹿島周辺のものばかりだ。
<目星>で第一蟻鹿丸、第二蟻鹿丸の船員が行方不明になった記事を見つけることができる。
記事自体は小さめのもので、詳しい記述はない。

また、さちと会っている場合、ある少女が行方不明になったと言う記事も目に止まる。
少女の名前は海野さち。特徴も探索者が知っているさちと一致する。
今から30年前、島にいるお母さんのところに行くと書置きをしていなくなったようだ。
<SAN0/1>

■本棚
何かないかと探すのであれば<図書館>で古びた手帳サイズの本を手に取ることができる。
ほとんどが潮風や経年で傷んでいるが、かろうじて読めるページに魔法陣のような絵と、以下の文章を見つけるだろう。
《魂の檻》
部屋や建物など、それとして他と隔絶できる空間に有効。
開閉できる扉などがあったとしても構わない。
それの内部、最も地下である場所に印を描くことで、空間内で死んだ者の魂を永遠に幽閉する。

作り方も書いてあるようだが理解するには時間が足りず、効果をなくす方法については記述がないようだ。

□執務机
家族の映った写真立てが倒れており、筆記用具が散らばっている。
よく調べるならば、鍵のかかった引き出しがあることに気づく。(鍵はどこにもない)
<鍵開け>か<STR10との対抗>で開けることができ、中には航海日誌が入っている。
ほとんどが何でもない航海の記述だが、気になる記述が一箇所ある。

『次の船長に選ばれた日、もしものときは金庫を開けるようにと伝えられた。
 しかし、これは多くの事を思えば避けられないことでもあるのだ。
 私たちが一時的に助かったところで、何になるというのか。
 きっと父や祖父も、そう思ったからあれを使っていないのだ。』

□ベッド
特に何もない。寝心地はまあまあだ。



[ミーティングルーム]

入ってまず目に止まるのは壁に空いた大穴だ。ここから外気が入ってきているようだ。
穴を塞ぐにしても、隙間を埋められるものがなければ完全に塞ぐのは難しそうに見える。
穴以外には長方形の机、壁の本棚、その近くに絵がある程度。

□長方形の机
懐中電灯が2本転がっている程度で目新しいものはない。

□本棚
本やファイルなど、少し難しそうなものが並んでいる。何かを探すなら<目星>を行う。

失敗すると手をかけた本が勢いよく開く。
そして探索者の手に熱い痛みが走り、思わず本を取り落とすだろう。
落ちた本の隙間から、仕込まれていたカッターの刃がカツンと床に転がる。
耐久に1D3ダメージを受けたあと、技能成功時と同じ情報を手に入れることになる。

成功するとこの船に関する書類をまとめたファイルを見つけることができる。
どうやら1925年に初代の第一蟻鹿丸が作られ、第二、第三蟻鹿丸と、寸分違わず同じ作りの船のようだ。
1925-1955 第一蟻鹿丸
1955-1985 第二蟻鹿丸
1985-    第三蟻鹿丸
(※現在を2015年とする)

これに対して、船に関わることのある探索者は<知識>をロールすることができる。
成功すると『客船やタンカー船は確かに30年ほどで安全性などの観点から海外に転売、もしくは廃棄する傾向にあるが、漁船とも言えるサイズでしかも個人の持ち物である船にしては随分と早く代替わりしている』と感じる。

■壁の絵
映画のポスターのような、青と白を基調とした大型船の絵のようだがあまり明るい雰囲気とは言えない。
額ごと外して見ても裏には何もない。額から絵を出した場合のみ絵の裏に書かれた呪文を習得できる。
▼二つの呪文と一行の文章(公開情報)




[娯楽室]

マットが敷かれた床、ブラウン管テレビとクッションや座布団、背の低い本棚があるくつろぐための部屋といった内装。
大きめの窓もあるが、外はどうにも白く煙っている。

□窓
周囲はやはり霧で視界が悪い。下を覗き込むと、恐らくスクリューがあるのであろう場所が確認できる。
海上に波紋はなく、回転が止まっているようだ。
<目星-10>に成功するとうっすらとその周辺に白い筋が見える。
それはまるで飛行機雲のようだ。しかし、それは常に形を変えてうねっており、海の中へ伸び、まるでスクリューに絡みついているようにも見えるだろう。

■テレビとクッション
テレビはつかない。リモコンやクッションは使ったまま放置されている。
クッションを片付けるなどの宣言があった場合、その下から操舵室と書かれた鍵を見つける。

■背の低い本棚
<図書館>で「幻世界へ」という本を見つける。
小説のため全てを読む時間はないが、前書きのみならすぐ読めるだろう。
また、技能の成否に関わらず「雲の怪物」や「霧の中に潜むもの」といったタイトルの小説も置いてある。
~幻世界へ 前書き~
 夢の世界への入り口は、なにも暖かいベッドの中に限らない。
 深い洞窟の奥。白い帆船。階段の先。ランプの光。
 ふとしたところに、扉は存在するものだ。
 だが、気を付けるといい。
 君たちがいる世界と夢の世界では、時の流れ、物の形が同じではない。
 偶然足を踏み入れてしまったときは、すぐさま帰るべきだ。
 もっとも、それが簡単に叶うような面白味のない世界であれば、私はこの物語を書いてはいないだろう。
 19XX - Ward Phillips




[船員個室(1〜6)]

一人用のとても狭い部屋。同時に入れて二人程度だろう。
家具はどの部屋も共通でベッド、机、クローゼット程度のものしかない。

■1の個室

□2の個室

□3の個室

□4の個室

□5の個室

□6の個室



[船底]

階段を下りていくと、海面下の空間には水が入り込んでおり、階段の途中まで浸水していることに気づく。
後方にはエンジンの一部が顔を出しているが、距離があり詳しい様子はわからない。

エンジンの様子を見たい場合、探索者は<水泳>ロールを行う必要がある。
無事ロールに成功したならばまっすぐエンジンに向かうのか、途中で何か調べるのかを聞き、それに応じて情報を渡すこと。
失敗したならCON5ロールを振らせ、フレーバーで溺れさせ他の探索者に助けさせると良いだろう。

■エンジン
近づくと、周辺の水が熱をもっていることがわかる。エンジン自体は動いているようだ。
<機械系技能>か<知識>に成功すると、エンジンはかなり高温になっており、危険な状態ではないかと思う。
強い衝撃を加え、かつ火気があると最悪の場合燃料に引火し爆発、船全体にも影響が出るだろう。

□船底を確認する
水に沈んでしまった船底に赤い模様が描かれていることに気づく。
<目星>に成功すると、それはほの暗い水の中、不気味なほど鮮やかに目に飛び込んでくる。
魔法陣という表現がぴったりに思える図であり、《魂の檻》を知っていればこれがそうだと直感する。
まだ船長室で《魂の檻》についての記述を見つけていない場合は<オカルト>で模様から檻のような印象を受ける、もしくは<神話技能>で一種の結界のようなものだと感じ、この魔法陣が存在する限り、囚われたものは開放されないだろうと思い至っても良い。

□水が入り込んだ穴を探す
潜水して辺りを見回すと鉄でできた船の壁が破れている箇所を発見する。
加えて以下の描写を行い、深きものたちが船の周りで探索者たちを狙っていることをやんわり伝える。

そしてその穴から、こちらを伺う人影。いや、違う。
限りなく人に近いシルエットを持つそれの頭部は魚類のそれであった。
澱んだ海中、魚の瞳がじっとこちらを見つめている。<SAN0/1D6>
それらは中には入ってこようとはせず、船の周りを彷徨いているようだ。



エンディング

エンディングは大きく分けてトゥルー、ハッピー、ノーマル、バッドの4種類。
各条件を確認し、描写後SAN回復と報酬処理を行う。

トゥルーエンド・よい後悔を

[条件:海のものと共に船から脱出する]
気づくと、あなたたちは港に立ち尽くしていた。
天気は悪く、今にも雨が降り出しそうだ。

ふと顔を海の方に向けると、ちょうど一隻の船が港から離れるところだった。
頭が痛い。その痛みとともに、自分たちの身に起こった惨劇をじわじわと思い出す。
凄惨な死体。吐き気を催すような悪意の罠。自分たちのために犠牲になった人。
  ぽたり、ぽたりと裂けてきた傷口から血が落ちた。

ゆっくりと、船が遠ざかっていく。
掻き分けられる波とエンジンの音に紛れて、若い男の声が耳に届いた。

「よい、後悔を。」


ハッピーエンド・よい航海を

[条件:船を爆破した上で海のものと共に船から脱出する]
気づくと、あなたたちは港に立ち尽くしていた。
よく晴れた空の下、聞き覚えのある声が聞こえた。

「あんたら、連絡船に乗っていく人じゃないか?
 もう出航時間だってよ、さっさと乗らねえと船が行っちまうぞ!」

Tシャツを着た‥‥海より山が好きそうな中年の男が、あなたたちを呼んでいる。
そばには島行きの連絡船が出航の時を待っているようだ。

急いで船に乗り込むあなたたち。割り当てられた席に座り、ふと正面のテレビに目をやる。
そこに映し出されたニュースは、ずっと行方不明になっていた少女の遺体が見つかり、時を経て家族の元へ帰ったと報道していた。

しばらくして、船が動き出す。窓から外を見てみると、先ほど声をかけてきた男の姿が見えた。
港から男が笑顔であなたたちに手を振る。

「よい航海を!」


ノーマルエンド・よい後悔を

[条件:船を爆破し、沈没に巻き込まれる]
轟音が響く。船が揺れる。
バリバリと音がして、船体にヒビが入っていく。
当然だ。船を破壊しようとして、あなたたちは爆弾を使ったのだから。

自分たちの足場が裂け、海中に沈んでいく。どこに逃れる術があるというのか。
流れ込む水流、ちぎれる船体と共に波に巻かれたあなたたちは呼吸を奪われる苦しみの中で意識を手放した。

(KPは探索者それぞれに対し1D100のダメージロールを行う)
・ロールの結果、探索者が全滅した

・ロールの結果、生き残った探索者がいる



バッドエンド・よい後悔を

[条件:3時間が経過する]
あなたたちは我に帰った。
船内が、いつの間にか白く満たされている。
口内から、器官から、霧が全身に巡っていく。
逃げ場などなかった。

意識も、体も。
全てはゆっくりと、白に溶けて、なくなった。


クリア報酬・処理

・トゥルーエンド:SAN1D12+神話技能5/技能成長
・ハッピーエンド:SAN2D10+神話技能3/技能成長
・ノーマルエンド(生還者):SAN1D10+神話技能5/技能成長
             2D3ヶ月入院、<幸運>失敗で体の一部にしびれなどの後遺症
・ノーマルエンド(死亡者):ロスト/報酬なし
・バッドエンド:永久ロスト/報酬なし

・PCが全員生還する:SAN1D6
・NPCを助ける(助けられたかどうかの基準はKPとPLの判断に任せる):一人につきSAN1D3

※本来の呪文データ/他参照データ




最後に

映画『ゴーストシップ』を元に執筆中、気晴らしに『ミスト』を観てこんなものができました。
エンディングやあちこちの描写などのほとんどが『ゴーストシップ』をなぞっているので、気が向いたら是非どうぞ。

リアル時間制限・NPCの(ほぼ)確定犠牲・推理要素と自分の苦手なものを詰め込みました。
クリアの方法を脳内当てゲームにしない範囲で、正々堂々できるだけいやらしいシナリオを作ったつもりです。
非難中傷含め不備や疑問などありましたらトップページ下から作者まで連絡をお願いします。

※BADエンドの「永久ロスト」表記はロスト忌避と復活の軽率さに疑問を感じて制作した名残です。
 ロストに永久も通常もないとお考えの方はあまり気にしないでください。



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