もう遅い (2016/05/09完成)(2016/07/09公開)(2018/11/27掲載場所移動)

はじめに

このシナリオは『クトゥルフ神話TRPG』に対応し、『マレウスモンストロルム』などを参考に制作されたものです。
舞台は現代日本(改変可能)、探索者が深夜の帰り道にとある廃ビルの前を通りかかったところからスタートします。
推奨される技能は<目星>、INTなどの一部ステータスが高数値であればプレイヤーの有利に働くでしょう。
プレイヤーは1人、プレイ時間はオンラインのボイスセッションで1~2時間ほどを想定しています。

また、このシナリオは探索者が後遺症を負う可能性が高めに設定されています。
結末に関わるロールを減少させる、重要なステータスを開示するなど、KPの裁量で適宜調整を加えても構いません。


KP情報

シナリオ背景

探索者は実験材料を探していた【ラム(マレウスP255)】によって【支配】されている。
シナリオが始まった時点で探索者は「もう遅い」のだ。

廃ビルを根城にしたラムは屋上に陣取り、行動観察も兼ねて実験体をビルへと呼び寄せている。
ひとところで急に何人も失踪しては怪しまれるため、各地に印を作り、門のようなものを作動させて人を移動させている。偶然にもその印に引っかかり、知らない間にラムのテリトリーまで移動させられてしまったのが今までの犠牲者、そして探索者だ。

また今シナリオの設定として、ラムの支配は近づけば近づくほど力を増すものとする。
最初の距離では外からビルの中(一階)までしか呼び込めず、徐々に日を重ねて支配を強め、自分の元へと階段を登らせていく。そしてその日が終わると【(支配失敗時の)記憶を失わせる処理】を行い、家路に帰す。
それを繰り返し、ラムに最も近く、最も支配された状態である最期の五日目がシナリオ導入となる。

探索者が死から逃れるためにはラムの予想を裏切る予想外の行動、窓から飛び降りることが必要だ。意図しなかった行動で自分の支配から逃れた探索者には敬意を評し、治療を施した上で記憶を消して帰してくれる。
すぐに直せない傷の場合は‥‥治療ついでに多少の実験を経て帰すことは帰す。

上は危険、下には降りれない、ならばどうするか? 
横から逃げることを選べるかどうかと、それまでの行動に加え、運が結末を左右する大きな要因となる。

神話生物データ(簡易)

ラム、ザ・グレイ
SIZ14 INT38 POW65 DEX19
呪文:キーパーが望むもの全て
正気度喪失:1/1d6
▼支配(クリックで展開)




本編

【導入】

夜も更けた頃、あなたはとあるビルの前を通りかかった。
真ん丸の月が浮かぶ空を切り取る、もう使われていない廃ビルのシルエット。
あなたは不思議と、このビルの中が気になった。

■入る
一階へ。

□入らない
あなたの足は勝手にビルの中へと進んで行く。<SAN1/1d3>後、一階へ。



【全階共通情報】

▽持ち物

▽動かずに待機する

▽出口、階段を降ろうとする

※▼「自分の記憶を辿る」、自身のここ数日の行動を気にするなどの宣言、RP

※この情報がないと高難易度になってしまうため、できるだけPLにこの情報を渡せるよう誘導してください。



【一階】

足元でぴしぴしと割れるコンクリートの破片の音を聞きながら、あなたはビルの中へと足を踏み入れた。
中はいかにも廃ビルといった雰囲気で、端に集められてはいるが瓦礫が多く、見渡す限りこの階は中心部しか通れないようだ。(※窓から出ることは不可能)
何本か柱が建っているこの広いロビーのような空間には、瓦礫以外に目立つものはなく、真っ直ぐ行った奥に階段が見える。

<強制アイデアロール>成功で、このビルは四階建てだったな、と思う。
(※クリティカルの場合、冒頭に「何故か、ふと」と付け加えるなどして何故か”知っている”ということを匂わせる)

■瓦礫
この空間は不法投棄されたガラクタだらけだ。
<目星>成功

■階段
二階へと続く上り階段。横の壁に色の薄い部分がある。
<アイデア>成功、他RPなど

□出口
全階共通情報参照。


【二階】

階段を登りきると、一階よりも随分瓦礫の少ない二階にたどり着く。
しかし、壁にある大きな窓が枠しか残っていないためか、室内には泥や砂が入り込んでおり、特に床はとても汚れている。
まだ階段は上に続いているようだ。

■階段
今登ってきた一階へ降りるための下り階段と、三階へ行くための上り階段。
近くの壁を確認する、もしくは部屋の探索を終えて戻ってくると壁に見取り図があるのに気がつくだろう。
見取り図

□窓
窓枠しか残っておらず、ガラスの部分が綺麗に取り外されている。
外を見る

下を見る

上を見る

□床
塩化ビニールの白っぽい床を黒い土が汚している。
<目星>成功

□瓦礫、もしくは部屋
<目星>成功




三階

更に階段を登り、三階へと足を踏み入れる。
何よりも先に目に飛び込んできたのは、部屋の中心、天井から垂れ下がったもの‥‥
端が輪になるように結ばれた、首を吊るためのボロボロのロープだ。

それを使った誰かの痕跡(つまり死体など)は残っていないものの、ここで誰かが使用を試みたのだと考えてしまい<SAN0/1d3>
ロープから目をそらし、部屋を見回してみると二階より少し綺麗に思う。
窓枠はゆがんでいるが、恐らく窓ガラスが残っているからだろう。
デスクや椅子も多く見受けられる。業務フロアだったのかもしれない。

■ロープ
近寄ってよく観察してみても、何かのシミが残っていたりはしない。一度も使われていないようだ。
経年のせいでボロボロ、力をこめれば簡単にちぎれそうである。
ロープを引っ張る

□床
やはり土で汚れ、いくつもの足跡が残っている。
<目星>成功

■窓
このビル自体が傾いているのか、窓枠が歪んでいる。この階の窓は開きそうにない。
(※上は見られない。ガラスを割れば上も見ることはできるが破片で1d3のダメージを受ける)
外を見る場合は二階参照。
下を見る

□デスクや椅子、部屋
救済ポイント。ここまでで取り落とした情報ゲットの再チャンスを与える。
全ての情報を拾っているなら、探索者の最近無くしたと思っていた小物を見つけさせてもいい。
(脱出に使えるものならば後ほど二重に嬉しいだろう)

□階段
上下に向かって伸びている。
<目星>成功




四階

フロアは「強盗に荒らされたかのような」惨状だ。
あちこちの壁にものが叩きつけられたような傷があり、その傷をつけたであろうデスクや椅子の成れの果てが転がっていた。
被害は窓まで及び、割られたガラスが周囲の床に散乱している。

□窓
割れた破片を引っ掛けないで近づくためにはDEX5のロールを行う。失敗で耐久-1。
遠くから投擲などでガラスを綺麗に割っておくなら大丈夫だろう。

外、上を見る場合は二階参照。
下を見る場合は<目星>-20%。その後の処理は三階参照。

■部屋全体、もしくは家具の成れの果て
部屋の中には、もはや原型を止めていないガラクタの群れと、まだ形が残る大きな家具があるようだ。
大きな家具

ガラクタの群れ


□床
ここまでで一度も床を見ていない、もしくは自分の足跡がどうなっているか気にした場合のみKPの温情で二階三階の記述を参考に情報を渡してもよい。
ただし、この階の自分の足跡は部屋の中を歩き回り、なんでもないところでふと消えている。
(ラムに記憶を消され元の帰り道へ送還された)

□階段
登れます。
(さっと登ろうとしてしまうなら、一度目は「壁にはものすごい数の傷がある」、二度目には1d100(POW5)などで「あなたが上へと登ろうとする、それを喜んでいる何かの気配を感じます」と警告をしてもいいでしょう。
 三度目の警告はありません。)



屋上

階段をのぼりきり、屋上へと続くドアを開ける。
がらんとした屋上には何もない。ただ月があなたを照らしている。

一歩、一歩とあなたは進んでいく。
屋上の端まで。
上には月が、下には地面が見える。

あなたが我に返ったとき、あなたは手すりを乗り越えて、その先へと一歩を踏み出していた。

体を捻り、上へと遠のく手すりに伸ばした手は空を切る。
何が?どうすれば?いくら考えようとも‥‥

全てが、もう遅い。

――探索者ロストエンド
(ラムに死体を回収され、帰って来ない)



飛び降りる

窓から飛び降りることを選んだ場合、どのように降りるか、何か準備をするか尋ねる。
(ダメージ処理に関わってくるため)
その後、POW5のロール。成功で思いきって飛び降りられる。
失敗すると直前で足がすくみ、躊躇ってしまう。

POW5失敗

POW5成功




結末

■ダメージロールの結果、耐久が-3以下になってしまった場合
(描写前にPLに[2d6]をロールしてもらう)
それから、あなたの消息はようとして知れなかった。
友人、家族、彼らがどれだけ探しても、足取りが掴めるのは近所の帰り道までで、どうにも手の尽くし用がなかった。

そして、[2d6]ヶ月の時が流れたある日、ふらりとあなたは帰ってきた。
記憶はあの帰り道で途切れており、行方不明になっていた間のことは何も覚えていない。
周囲の心配を他所に当の本人‥‥あなたはといえば、体に少々の違和感を覚えながらも日常に戻っていくのだった。

――探索者行方不明(後遺症)エンド
(ラムに回収された後、回復させられ実験後解放)
(2d6ヶ月使用不可、STR・CON-1d3生還)
報酬‥‥なし、SAN値は元の値に戻る。クトゥルフ神話技能に+1


■ダメージロールの結果、耐久が-2までだった場合
あなたは、病院のベッドの上で目を覚ます。
帰り道の途中で倒れているあなたを発見した通行人が、声をかけても目を覚まさなかったため救急車を呼んでくれたそうだ。

特に目立った外傷もなく、様子を見に来た医者に倒れた原因に心当たりはあるかと尋ねられるが、何があったか全く覚えていない。
思い出そうと試みる

何にせよ、あなたは今日も生きている。
あなたがいなくなるには、まだ早い。

――探索者生還エンド
(お好みで1d3日程度検査入院の期間を与えてもよい)
報酬




調整・改変案

「はじめに」にも記しましたが、難易度(≒致死率)を下げるなら高INT・高耐久・<跳躍>を推奨するとよいかと思います。
(※ただし高耐久・<跳躍>はクリア方法のネタバレに繋がりかねないので注意すること)

ルーニーが気に入らないKPは何の根拠もなくフライアウェイした探索者が死ななかった場合もラムに連れ去らせると良いでしょう。
お馬鹿キャラのRP? 知りません。シナリオクリアのためPCの行動に辻褄を合わせるのはPLの仕事です。後遺症すら無意味なPLならばさっくり殺しましょう。
とはいえ、ビルから飛び降りるのは心理的にも抵抗があるでしょう。もし危険かと聞かれたら「やってみないとわかりませんが、相応のダメージは発生します」などと答え、牽制しつつ選択肢から完全に除外するでもなく‥‥と警戒させすぎないようにしてください。
難易度を上げるも下げるもご自由にどうぞ。改変後のシナリオ公開はご遠慮下さい。

致命的なことになって初めて手遅れだと気付く人は多いものです。
気付かないままの方が幸せなのかも‥‥?

シナリオに致命的なミスや不備を発見した場合は「もう遅い」、なんて言わずにTwitterまで、よろしくお願いいたします。


(オフセなど、印刷使用する場合はpixivで公開しているものの方が見やすいかもしれません)


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