あわいの呼び  (2015/05/31完成)(2016/09/28公開)(2017/09/10掲載場所移動)

はじめに

このシナリオは『クトゥルフ神話TRPG』に対応したものです。
舞台は現代日本、夢(クローズド)と現実(シティ)を行き来する特殊シティシナリオです。
<目星><図書館>技能を持った3人前後の探索者向けにデザインされており、<英語><生物学><地質学><オカルト>なども使用するチャンスがあるかもしれません。
加えて道中の自由度が高いため、プレイには8~10時間程かかるでしょう。
また、ハンドアウトとして探索者たちはそれぞれの事情で[未鹿迎市/みかげいし]という市に滞在して既に一ヶ月ほど経っています。


KP情報

各種データと補足説明、キーパリングの注意点などはこちらのページにまとめてあります。
シナリオを使用する際は本編と合わせてご活用ください。
また、初見の場合はpixivに投稿したものの方が読みやすいかと思います。

シナリオ背景

全ての発端は探索者・瀬戸口彩の精神的な死である。

何度か神話的事象に巻き込まれていた彼女は探索の中である人物と近しい間柄になる。その人物の名はナイア、ニャルラトテップそのものだった。
ふとした拍子に手に入れた黒い本を媒介とし「ニャルラトテップを決まった周期で呼び出す」契約を結んでしまったため、一週間に一度彼女の元に(召喚されて)やってくるようになった彼に、彼女は淡い恋心を抱いていた。彼が何であるか、何故彼が自分の元にやってくるのかわかった上で、それでも彼女は彼を好きになってしまったのだ。
彩にとって幸せな日々はそう長くは続かず、その後遭遇した怪異により彼女の精神は崩壊、眠ったままの植物状態となる。それでも契約が続く限り彼は彼女の元を訪れ、夢に囚われながらも彼女は彼を想い続けていた。
そんな神話的エネルギーの集まる場所に引き寄せられてきたのが地底を掘るものだ。死者の精神とさえ交信できるそれらは眠ったままの彼女の精神と交信し、彼女が今までの経験から得た神話知識と彼に会いたいという想いを夢として周囲にばら撒き始めた。
契約者が死してなお契約に縛られている彼は、その夢に自らを黒いライオンとして紛れ込ませ、夢に囚われるであろう者の手を借りてもう一度彼女と会おうと画策する。ただ単に契約を破棄させたかったのか、それとも気まぐれに最期は手を引いてやろうと思ったのか、それは彼にしかわからない。

そして、彼女と彼がどうなるかは、奇しくもかつての彼女と同じ――探索者である君たちに委ねられたのだった。


本編

0.導入の導入

どこかから呼ばれている気がする。あなたはベッド、布団で眠っている。
あなたの見る夢ははっきりとした形をなしておらず、どこか気味の悪い存在を孕んでじわりじわりと迫ってくる。それは毎回違った風景であるのだが、夢を見るあなたは、「ああ、またこの夢か」と思うのだ。
そして夢から覚めたとき、内容はほとんど覚えていないがじんわりと汗をかいている。そんな日が一週間に一、二回の頻度であった。

このような日々が続いていた探索者たちは<SAN-1>の減少処理を行う。
KP情報(クリックで展開)



0-1.導入

少々夢を気にしながらも、あなたは眠りにつく。そして、いつものように夢を見る。
‥‥しかし、その日の夢は今までのものとは全く違った。

ここは夢だと確信できるのに、覚醒の世界かと思うほどに頭は冴え、感覚は妙にリアルだ。
どこかの部屋の中、近くには困惑した表情を浮かべる(探索者の数)人の人間。きっと自分も同じような顔をしているのだろう。

湧き上がる不安感、奇妙な感覚。<SAN-1d4>の減少処理を行う。


■部屋
探索者たちがいるのはひどく殺風景で四角い部屋。
正面の壁に分厚そうな引き戸がある以外は何もない。
服装は普段のもので、寝る前に何か持っていたとしても持ち物は何一つ持ち込めない。

また、<聞き耳>を行っても通常は何も聞こえないが、クリティカル(お好みでファンブルも)の場合のみ、ささやき声がどこかから聞こえてくる。
このささやき声を聞いた探索者は<SAN-1d6>の後、<クトゥルフ神話技能+3>を得る。
KP情報(クリックで展開)


□扉
引き戸であるが、引いても開かない。素材はコーティングされたスチールか何かのようだ。
目線より少し下、この部屋が何であるか示すプレートがあるような位置には、横長の長方形の枠組みだけがついている。
枠は上部分の囲みがなく、上から薄い板のようなものを差し込めそうだとわかるだろう。
※探索者が無理に扉を開けようとする

扉の先に<聞き耳>を行っても、現時点では何も聞こえない。(成功者は後ほど処理有り)
探索者たちが自己紹介などを済ませ、この部屋を一通り調べたところで下記処理を発生させる。

ふいに、あなたたちは自分の意識が遠のくのを感じる。
夢から覚める。そう思ったとき、どこからともなく、声が響いた。
「会いに来て。」
(前述の扉への<聞き耳>成功者はその声が開かない扉の先から聞こえたように思う。)

澄んだ女性の呼び声を聞きながら、あなたたちは意識を手放し‥‥
再び目を開けると、そこは自室のベッドや布団の上だった。

はっきりとした記憶の中に、自分の知らないはずの知識まで紛れ込んでいるような気がする。
目を覚ました探索者たちは<クトゥルフ神話技能+1>を得る。



1.現実

探索者たちは未鹿迎市に滞在している理由(仕事や用事など)の間に探索をすることになるだろう。
怪異に慣れすぎた探索者でない限り一日目はほとんど進展はないと思うが、二日目からは移動時間などを調節して三、四日で解決できる程度を目安にする。

また、探索者が積極的に調査をしなかった場合でも通行人や同僚を使い必ず一日目のどこかで1-1.夢の話の情報を出すようにする。


1-1.夢の話

聞き込み、もしくはインターネットで『夢(未鹿迎市)』について調べると『最近奇妙な夢を見る人が増えている』という情報を得る。
更に<コンピューター><RPなど>で調査を続けると、それは雑誌でも取り上げられていたということもわかるだろう。
調べた探索者一人につき一つ、どちらかの情報を渡す。
・市政だより‥‥市が毎週発行しているもの。 1-2.市役所参照
・未鹿迎市ジャーナル‥‥三流のゴシップ誌といった風体。 1-3.未鹿迎市ジャーナル参照



1-2.市役所

市の中心部に位置する面白みのない建物。9時から開いており、17時には閉まってしまう。
業務時間内に広報部を訪れれば担当者に会うことができる。夢について書かれた号を貰うことも可能。

□市政だより
夢について書かれているのは最新のものより二号ほど前のもの。市政だよりは毎週発行しているようだ。
市長の挨拶や市民が行った市の行事などが書いてある中に小さなコラムを見つける。内容は以下の通り。
『最近変わった夢を見る人が多いそうです。磁場の乱れや気温の変化など様々な原因が考えられますが、はっきりとしたことはわかっていません。市民の皆様も十分お気を付けください(担当:白瀬)』

また、<図書館><目星>他宣言で、この市内で山崩れ、地盤沈下の事故があったことが書かれているのにも気づくことができる。
本当にそれだけの短い文で詳細は記されておらず、『未鹿迎市 地盤沈下』でネット検索などをしてみても詳しいことはわからない。
市の地質調査を行っている会社(名前は書かれていない)が原因を目下調査中らしい。


■広報担当職員
業務時間中であればいつでも会える。普通に話しても目立ったことは聞けない。
夢のことに触れているコラムの話を振ると、
「市民なんでも相談室という電話相談を行っていまして。そこに変な夢を見るって相談がたくさん来るようになったんですよね」
「気になるくらい多くなったのは二週間前くらいからですね」などと教えてくれる。
突っ込んだ話を聞くと「あの、何故そんなことまで‥‥?」と疑問を持つかもしれない。探索者はうまく話を引き出す必要があるだろう。

コラムに書かれた原因は推測の域を出ていない情報のため、磁場の乱れが夢に関わっているのかなどと聞いても職員は「あー、いえ、そう決まったわけではないんですが‥‥」と困り顔で歯切れの悪い返事を返してくる。
探索者が地盤沈下などの単語を出すか、<説得>に成功すれば「夢に関係あるかはわかりませんが‥‥」と市の現状を話してくれる。
「同じくらいの時期から山の方で土砂崩れや、街中でも突然地面が陥没したりといった事故が起きていまして」
「きちんと地盤調査は行っていたので、本当にわけがわからなくて。今も調査は続けてもらっているんですが、まだ何とも‥‥」
調査を頼んでいる会社によって、事故現場はどこも既に補修工事されているのでその点は安心してほしいと職員は続けるだろう。

探索者が陥没事故に関してもっと詳しい情報が欲しいと頼むと、情報を民間に公開するかの管理から全てをその調査会社に任せているのでこちらから答えることはできないのだと謝罪する。
職員は情報公開の許可が下りるまで待ってほしいと言うが、RPや技能で頼み込むと「あまり勝手に会社の名前を出すのも良くないと思いますが‥‥そこまで言われるのでしたら、直接その会社に伺っていただけますか?」と調査を依頼している会社が1-4.DHS株式会社であると教えてくれるだろう。



1-3.未鹿迎市ジャーナル

雑居ビル二階の小さな雑誌社。中は数台のパソコンとデスク、来客応対を行う休憩スペース、入口近くに受付がある程度。
アポを入れていない場合は担当記者は16時以降でないと不在。
電話をかける、もしくは直接訪れた場合は事務アルバイトの女の子が対応する。

□未鹿迎市ジャーナル
未鹿迎市ジャーナル(社名)の発行している未鹿迎市ジャーナル(雑誌名)。紛らわしい。月刊420円。
表紙には市長ヅラ疑惑?!や、今ドキJKの恋愛テクニック♥などどこを目指しているのかわからない見出しがデカデカと書かれている。目立たない小さなものだが、『集団催眠ならぬ集団睡眠!?市民を襲う悪夢』という見出しにも気付けるだろう。

『集団催眠~』のページを開けば、目線の入った市民の写真とコメント、ざっくりとした夢についてのアンケートなどが載っている。
記事の内容は探索者たちが0.導入の導入で見ていたような掴みどころのない夢についてのようだ(0-1.導入で見た部屋についての記述はない)。

『このような平和な市に何が起こったというのか?この悪夢の発生源、そして向かう先はどこなのか?独自の調査ルートで我々は真実へのピースを発見した!そのピースとは‥‥
 ――続報を待て!!』
‥‥などと、無責任で根拠の感じられないアオリで記事は終わっている。
記者名を気にするなら、この記事を書いたのが[枷根田 掴/がせねた つかむ]という人物だともわかるだろう。

また、他にまともな記事がないか<目星><図書館>を行うと『突然発生した大穴!調査会社の怠慢』というこれまたなかなかに小さい見出しにも気づくことができる。
ページを読むと、D社という地質調査会社のことを袋叩きにしている。内容には目新しいことはない。
なお、これも記者は集団睡眠の記事を書いた人物と同じである。


■担当・枷根田掴
アポがないとデスクにかじりついてパソコンで何やら打ち込んでおり、「あーごめんごめん忙しいんだ!」と机から離れようとしない。
しかし、情報提供をしたいと言えばちょうど休憩にしようと思っていたとばかりに来客スペースで応対してくれる。

夢について話せば、どこまで話すかに関わらず枷根田は当事者である探索者たちの話に興味を持って耳を傾ける。
もしくは、『集団睡眠』の記事の話を出すなら「お!俺の記事読んでくれたの!」と嬉しそうに反応し、感想を求めてくるだろう(探索者が記事のことを気にしないようであれば「俺も夢騒動についてはちょっと調べてこういう記事を書いててさ」と雑誌を見せるとよい)。

枷根田と会話する中で、大穴の記事や独自の調査ルートについて尋ねるなら、彼は強力な助っ人のことを口にする。
「実はさ、夢の話と大穴が発生するようになったのは同時期なんだ!これはもうコーラを飲んだらゲップが出るくらい確実に関連性がある!!」
「‥‥っていうのを、いつもアドバイスもらってる先生から教えてもらってさ」
その人物に会いたいなどと頼めば、枷根田は快く1-5.岡の家の場所を教えてくれる。
※探索者が夢についての新情報(部屋の夢)を話して見解を求めた場合にも「んー、俺じゃちょっと判断できないなー。良かったら、俺がアドバイスもらってる先生にその話してみてくれる?」と助っ人の話が出るだろう。

また、探索者が枷根田と意気投合するなら「よし!君らをジャーナル特派員に任命する!」と首からかけるような手作りの仮社員証を押し付けてくる。
市内で使うのであれば「ああ、あの雑誌ね」と何となく身分証明が容易くなったようなそうでもないような効果を発揮する。
しかしDHS社でこれを見せる、もしくは枷根田の名前を出すと印象が一気に悪くなる。



1-4.DHS株式会社

市の中心部に建つそこそこ大きな地質調査会社本部ビル。そばにはブルーシートで囲まれた一角がある。
一階は開放感のあるロビーであり、いくつかのソファとテーブルが設置されている。
受付の横を通らないと奥のエレベーターには乗ることができないようだ(関係者でなければ一階にしか立ち入ることができない)。

□受付
陥没事故のことを聞くと市民の皆様にはご迷惑をおかけしていますと上辺だけではない謝罪を繰り返される。
簡単に現在の調査状況を教えてくれることはないが、担当者へのアポを取ってもらって出直す他に、受付で押し問答を続けていても担当者に会える。

しばらく粘っていると、くたびれた白衣にボサボサの髪の毛の男が奥のエレベーターからやってくる。
「はいはい記者か何かの方ですかねー、取材や文句なら弁護士通していただけますかー」と見るからに歓迎していない雰囲気だが、RPによってはこのまま話を聞くことも可能だろう。

素直にアポを取って引き返すなら、受付で担当者の空いている時間(探索の進み具合で調整)にアポを入れてもらえる。
「○○様ですね、では明日の○時、担当主任の地質が対応させていただきます」



■担当主任・地質測
探索者たちをロビーの椅子に座らせ、一応話は聞いてくれる。
ただし、陥没の起きた最初の場所を知るという目的にたどり着いていない場合はさっさと話を切り上げて仕事に戻ってしまう。

地質は非協力的な姿勢で探索者の質問に答えたり、はぐらかしたりといった対応を取る。 「まあこっちも仕事なんでね、金もらってやってんだから手抜いたりしねーよ」
「ここは土地もいいし、特に今まで問題らしい問題もなかったんだよ」
それでも何とか情報を引き出そうと会話を続けるか、わざと怒らせるような言動をとっていると、地質は付き合ってられないといったようにため息をついたあと、立ち上がってエレベーターに消える。
そして探索者をしばし待たせた後、資料を持って戻ってくる。(探索者が諦めて帰ってしまいそうな場合、受付から「しばらくお待ちください」とフォローをいれるとよい)
「どうせ素人にゃわかんねーだろうがよ」と、その資料を投げて寄越すだろう。

探索者が地質の言動に気を配るなら、言葉の端々に未鹿迎市に対する愛着を感じることができてもいいだろう。
裏方として支えていたはずの市を守れず、原因がわかってもどうにもできない現状を歯がゆく思っており、それゆえに外野から口出ししてくる探索者たちにイラついているのである。
そのため、探索者が地質の気持ちを汲んで「この市を守るのに協力したい」など未鹿迎市を心配するような発言をした場合は最もスムーズに地質からの協力を得ることができる。地質はしばし沈黙し、「‥‥わかったよ、俺だってどうにかしたいとは思ってるんだ‥‥待ってろ」と席を立ち、エレベーターに消える。
その後、調査資料を持って帰ってくるだろう。


□資料
よくわからない何かの数値やグラフ、現場の写真、それらが陥没した場所別にまとめられているもの。
日付を確認すると、どうやら一番最初に穴があいたのは病院の中庭のようだ。

<地質学>に成功するなら、地質の言うように土壌にはなんら問題らしい問題はないことが見て取れる。
空いた穴の調査結果もあるが、完全に外的要因があることもわかるだろう。何かがまるで土を食い荒らすかのように、この町の下を這い回っているような。そんな陥没の仕方だ。
(技能に失敗するようなら地質から説明させても良い。)


□その他
会話の途中、地質は「原因があんだよ‥‥俺の町の地下に穴をボコボコ掘ってやがる奴がよ‥‥」とぼやくように発言する。
追求するなら「‥‥調査中に、偶然写真が撮れてな。ま、そこに写ってたんだよ」と言葉を濁す。
明らかに言わなければよかったという表情をしているが、執拗に問うか真摯に尋ねれば「ミミズみたいなバケモン」「太ももくらいの太さで‥‥長さは人の背くらいあった」「見ねえ方がいい」と断片的に情報をくれる(彼は既にそれを見て正気度が減っているため、探索者を気遣っている)。
それでも見たいと食い下がれば、諦めて写真の入った封筒を持ってきてくれる。封筒の中には限られた明かりに照らされた穴の中の様子が写った写真が数枚入っているだろう(情報まとめの化物の写真・描写例を参照)。
探索者が写真を見ようが見まいが、地質は必ずその身を案じて警告してくれる。
「万が一にも穴の中に入ろうなんて思うなよ、‥‥人がどうこうできるもんじゃねえ」

もし、まだジャーナルの話がまだ出ていないならここで出しておく。
未鹿迎市ジャーナル(枷根田)は今回の地盤沈下の件を取材するべく、何度も地質に会いに来てはあることないことを好き勝手に書き立てているのだ(そのため、ジャーナルに関連した話題を出すとDHS社での印象が悪くなる)。
「最近はあのクソネタ、あいつのせいでうるせーうるせー」
「あ?未鹿迎市ジャーナルだよ、大層な名前しやがって。お前ら、暇なんだったら俺の仕事の邪魔してねえでそっちに行けよ」



1-5.岡の家

山中と言っていいほど山に近い場所に建つあばら屋のような一軒家。
裏手の山は軽い土砂崩れが起きており、近くにはブルーシートと警備員の姿がある。
家の呼び鈴を押すと「ギンゴーン」と不快な音が鳴り、奥から「空いてるよ」と声がするだろう。

声のする方へ進んでいくと、書斎のような本棚にも床にも本が溢れている部屋に辿り着く。
そして、その中心で座布団に座った男が「何の用だい?」と探索者たちに問いかけてくる。


■岡との対話
ジャーナルから紹介されたことを言うと、わかったというように手を叩いて話を進めてくれるだろう。
「ああ、枷根田からか!ということは、今起こってる夢騒動についてだね」
「ちなみに、あんたらはどのくらい知ってんだい?」

岡は探索者たちの話に適宜確認や質問を投げかけ、探索が行き詰まっているようならアドバイスをくれるだろう。
ただし、岡は連絡手段を持たないため、アドバイスが欲しい探索者はわざわざ家へ赴かなくてはならない。
・岡の使い方


探索者が図書館で夢についての二つのパターンを調べているならば、岡は今回の夢騒動がどちらに分類されると思うか尋ねる。
それに対し呼び夢と答えると「今回の夢は誰かが作り出し、そこに皆が呼ばれているタイプだろうね」と同意するだろう。
同じ頃に起こり始めた穴の話もするなら、更に岡は続ける。
「いい目のつけどころじゃないか。物語だろうと、現実のことだろうと‥‥どんなことでも最初と最後は肝心でね。この話はまだ終わっちゃいない。つまり、肝心なのは最初だ。」

DHS社で地質から資料を見せてもらっていれば、じっと探索者の言葉を待つ岡に、最初に穴が開いた場所は「病院」であると告げることができるだろう。
答えを聞くと、岡はよろしい、といった様子でにんまり笑う。
「夢と穴は何らかの形で繋がっている。と考えると、最初に穴が表れた病院に何らかの手がかりがある。ここまではいいね?‥‥そこで、あたしの持ってる情報だ。
‥‥この夢、夜だけじゃなくて昼にも見るらしいんだよ」

それを聞いた探索者は<アイデア>ロールを行うことができる。もしくはPLが思いついたことがあるのなら、それを答えてもらう。
岡が言いたいのはつまり、誰かが呼び夢を作り出しているのだとすれば、その誰かは昼も眠っているのでは?ということだ。
「そこに病院ときたもんだ。これは大分しぼれてきただろう?」(夢の主は意識不明、昏睡状態ではないか)



1-6.図書館

そこそこ広く、本も種類豊富に取り揃えられている市立図書館。
駐車場にはブルーシートで囲まれた一角があり、そばには警備員がいる。

■得られる情報
探索者たちは、調べたい対象を指定し<図書館>ロールを行うことでそれに対応した情報の書かれた本を見つけることができる。
もし技能に尽く失敗したり、技能値が心もとない時は司書さんに手伝ってもらうと良いだろう。

町の歴史について調べる

地中の怪物などについて調べる

夢について調べる


他、適宜KPの裁量で情報を与えて良い。
新聞などを見ても、地盤沈下については細々と触れられている程度で気になるような事件、事故の情報はない。



1-7.病院

未鹿迎市立病院。広い敷地に4階建ての大きな建物が一つ建っている。
1階は各科の処置室、2階から上に入院患者の部屋と手術室など大掛かりな設備がある。
入院患者と面会ができるのは10時から17時までとなっているようだ。

□1階・中庭
探索者は病院の関係者に陥没事故の現場について尋ねることもできる。
詳しい話を知っている者を見つけても「地震のような揺れを感じて外を見たら中庭の辺りに穴が空いていた」「深夜だったので出歩いている人がいなくてよかった」と答える以上の情報は手に入らない。
中庭を覗きに行っても、他のブルーシートで覆われた箇所と同じでなんら変わったことはないだろう。

また、1階の受付で入院患者のことを聞くと、ここは診察を希望する人のための場所であるため2階から上のナースステーションで聞いてくれと言われてしまう。
※探索者が上階へ行かない



■2階〜4階
階段、エレベーターで上に上がると正面の壁にこの階の見取り図が貼ってあるのが確認できる。
また、どの階も右手にナースステーション、左手には患者用のちょっとした憩いのスペースがあり、左右の廊下の先に部屋がいくつもある構造になっている。

□見取り図を見る
201~215が大部屋、216~220が個室だとわかる。(先頭の数字は階数)
<アイデア>もしくはリアルアイデアで意識不明、昏睡の人は大部屋にはいないだろうと思いつくことができる。
個室の回りを彷徨けば、使われている部屋は2つ、加えて患者が女性であるのは220号室だけだとわかるだろう。

□ナースに話を聞く
基本的に「申し訳ありません、患者さんの個人情報はお教えできません‥‥」という対応。名前すら教えてはくれない。
『意識不明』などの単語を出すと思い当たったようで「ああ、あの市立学校の先生‥‥220号室です」と少し気の毒そうな様子で耳打ちする。
「今は面会謝絶となっていますが‥‥窓のところから顔は見てあげられるので」とそそくさと去っていく。
面会謝絶の理由を尋ねれば、回復の見込みがほとんどないことと母親からの希望だと答えてくれる。


■220号室
普通なら名前のかかれたプラカードがささっている枠組みには何もなく、病室の扉には窓がついており、中の様子がすぐわかるようになっている。
中を覗くと、一人の髪の長い女性がベッドに横たえられている。その瞳が開くことはなく、側に取り付けられている機械類からも、彼女が容易には覚めない夢の中にいるであろうことがわかる。

探索者が<アイデア>に成功すると、夢で見た開かない引き戸はどことなくこのスチール製のドアに雰囲気が似ていると気づく。
名前のカードがささっていない枠組みも、あの引き戸の枠組みにダブって見えるだろう。
扉には鍵が掛かっており開かない上、入っても何のイベントも起こらない。
<鍵開け>を試みたいという場合、KPから流石にそれは言い逃れができなくなると止めた方がいい。

また、ナースから彼女の情報を得ていない場合、話好きのおばちゃん掃除員などを登場させ、
「謎よねえ、この子。一ヶ月くらい前からかしら?ここにいるんだけどね、二日に一回くらい来る母親くらいしか面会にくる人も見かけないのよお。なんでも市立学校の先生って言うじゃない?生徒たちは先生の入院を知らないのかしらねえ」
などと必ず市立学校のワードは渡すようにする。



1-8.学校

未鹿迎市の市立学校というと、大きな敷地内に小中高が併設された未鹿市立学校のことである。(このことはしばらく未鹿迎市に滞在している探索者たちも知っていてよい)
小中高それぞれの校舎は多少離れてはいるものの、校門は共通であり、校門横には守衛室がある。

昨今には珍しく警備がゆるいため、適当な理由をつけて守衛に話を通し、来客名簿に名前と連絡先を書けば首から下げる来客証を渡されるだろう。
(もしも潜入や強行突破を成功させたとして、この来客証がないと通報されるため提案するものがいた場合はさりげなく止めること)

■高校
生徒用玄関の近くに教員・来客用の玄関があり、事務室の窓から事務員のおばちゃんに話しかけることが可能。
長期で休んでいる教員について聞くと、「ああなんだか急にお休みになっちゃった子ね、知ってるわよ。あなたたちあの子のお友達?ごめんねえ、私そんなに仲がいいってわけじゃなくてねえ‥‥そうだわ!田原先生を呼びましょ!確か仲が良かったハズだわピポパー」と彼女の友人である教師を内線で呼んでくれる。

友人・田原は落ち着いた雰囲気をまとった25~30代の女性だ。 突然の訪問者に戸惑いつつも、休養中の友人職員について聞きたいと言えば知っていることを話し出すだろう。
「瀬戸口先生とは担当が現国と古典ってこともあってよく話していて‥‥年も近くて、休日は一緒に出掛けたりしてたんです」
「子供が好きで、よく小学校の子達にも構ってました、もしかすると教えてる高校生よりも。放課後一緒に遊んだりとか‥‥その子達からも彼女の話、聞けるかもしれません」

田原は心底心当たりがないと言った様子で、「どうしてこんなことになったかは全く‥‥来なくなる前なんて、むしろ妙に毎日が楽しそうで‥‥」と零す。
妙に、という点を追求すると少し言葉に詰まりながら「その、あの子‥‥‥彼氏、が、できたみたいで‥‥」と答えるだろう。
「付き合い悪くなっちゃって。直接聞いた訳じゃないんですけど‥‥まあ、遠慮してたのかな。たまたま二人で歩いてるのを見かけて‥‥凄く、イケメンでした。南米系?っていうんですか?外国の人っぽかったですけど」

また、探索者は彼女が来なくなった当日の話を聞くこともできる。
「あの日は、珍しく遅刻かなって思ってたら主任に直接お母様が電話してらして、目が覚めないから救急車を呼んだとかなんとか‥‥それから、一ヶ月です。最初はすぐ帰ってくるだろうと思ってて、そのうち私も色々忙しくて‥‥お母様も心配だし一度家にもお邪魔したいとは思ってるんですけど、なかなか」
ここで交渉を行えば、1-9.彼女の家の住所を教えてくれるだろう。(実家で家族三人暮らし)


□中学校
生徒用玄関の近くに教員・来客用の玄関がある。中へ入ったすぐに職員室があるため、そこで話が聞けるだろう。
しかし、休んでいる・入院している教員について聞いても「すみませんが、そのような教員はおりませんねえ‥‥」と他へ行くよう促されるだけだ。
諦めずに中学生などを捕まえて話を聞くなら、<幸運>に成功すると「高校の方で一人先生が長期休んでるって噂を聞いた」と言う情報を手に入れることができるかもしれない。


□小学校
生徒と教員どちらも兼用の玄関と、その近くに直接校庭から職員室に入れる入口がある。
中学校と同じく、ここでも教師から有力な情報は得られない。

ただし、校庭で遊んでいる子供たちに「『瀬戸口先生』を知っているか」と聞くと「彩ちゃん?知ってるー!」反応がある。
「よく遊んでくれる!」「面白いー!」「優しい!」「怒ると怖い!」など、評判はまあまあ良いようだ。
しばらく子供たちに付き合って彼女の話を聞いていると、子供たちの間でちょっとした言い争いが起こる。
「あのね、彩ちゃん猫を飼い始めてたみたい」と言った子供に、他の子供が「えー?彩ちゃんうさぎ小屋の掃除手伝ってくれたとき私に動物の世話は無理かもって言ってたじゃん!掃除下手だったし!」などと反論。
「でも、彩ちゃんが鞄持ってお散歩してて、それ何って聞いたら猫だよって‥‥言ってたの、一ヶ月よりもっと前だったと思う‥‥」
誰も嘘をついているようには見えず、探索者も小さな矛盾を疑問に思うかもしれない。

また、彼氏に関しては「そんなわけねーじゃん!オニババだぜー!」「おとこひでりだって!」と知らない様子だ。



1-9.彼女の家

住宅外の中の一軒家。やつれた様子の50代前後の女性が迎えてくれる。
探索者が友人だなどと言うと、疑う様子も見せず「彩の‥‥?ごめんなさいね、あまりおもてなしもできませんけど‥‥どうぞ‥‥」と家に上げてくれるだろう。

彼女の母親だという女性は、基本的に知っていることであれば何でも答えてくれる。
会話の最中、母親はふと思い出したように「そういえば、あの子が起きなくなる前‥‥一週間のうちどの曜日だったか、前日から楽しそうにウキウキしていて‥‥早くに出かけて遅くに帰ってくる日があったように思います」と言うだろう。
※会話例

話が一段落すれば、母親は探索者を彩の部屋へ案内する。


■彩の部屋
階段を上って突き当たり、ドアノブには男の子と女の子のかわいい人形が飾られている部屋。
内装は一言で言えばファンシー。うさぎのカレンダーが貼られた壁に、ぬいぐるみが沢山乗っかったベッド。
本棚には様々な小説や雑誌が収められ、机の上には授業で使う教材なども置かれている。

部屋全体の印象は女の子の部屋、といった雰囲気。全体的にピンク色で統一されている。
後ほど母親にこのことを聞けば「彩は小さい頃からピンクが好きで」と力なく笑うだろう。

□机
<目星>に成功すると、大きめのブックカバーを見つける。中身はなく、デコレーションされたピンクのカバーのみ。

□カレンダー
一枚に一ヶ月が載っている、ちぎらずめくっていくタイプの大きいカレンダーだ。
<目星>に成功するか、数ヶ月前から遡って確認していけば、様々な予定が書き込まれているが二ヶ月前(彩が昏睡する一か月前)から土曜はほとんど予定が書かれていないことに気づくことができる。
再度母親に彩が楽しそうに出かけていた日は土曜ではないかと確認を取れば、確かそうだったと思い出すだろう。

□ベッド
<目星>などでくまなく調べると、雑誌の切れ端が落ちていることに気づく。
紙が古いが、この俗っぽい文章は未鹿迎市ジャーナルのようだ。
『モテカワコーデ!色のパワーで彼の心もあなたのモノ!?』
それ以上はちぎれており読むことができない。

□本棚
日記を探すと指定がなければ<図書館>が必要になる。
Diaryと書かれたノートには毎日記入があり、マメなのか神経質な性格なのではと感じる。
起こったことを淡々と日本語で記し、その下に英語で何やら小さく追記がされているようだが、二ヶ月ほど前(彩が昏睡する一か月ほど前)からの記述はない。
また、<英語>ロールに成功すると、追記が愚痴や起こったことに対する自分の感想だとわかる。
 例) 日本語「教頭より講義内容への修正。以降指示に沿って講義を行う」
   英語『あのハゲ絶対八つ当たりじゃない!ついてないや‥‥サイアク』



2.夢

寝る度に特殊処理が入るため、こちらのページを参照。
また、KPは現実で関連する情報を手に入れると出現するものに関してのチェックを忘れないよう気を付けること。


2-1.中心の部屋

基本描写は0-1.導入と同じ。
以降は探索者が現実で得たものによって発生する追加描写となる。

□ジャーナルor市政の話を聞く
部屋の中央にシンプルな机と、その上に雑誌(もしくは小冊子)が出現。
雑誌は話に聞いたジャーナル(もしくは市政)であるが、真っ白なページや落丁が目立つ。
(噂で聞いただけでなく、現実でそれらを手にして読んでいれば、完全なものになっている。)

このことに関して<アイデア>で現実で自分たちが見たもの、手に入れた情報が反映されているのではないかと気づけていいだろう。
また、描写が終わったあと「今回は目に見えて変化があったため描写も挟んだが、少し内装が変わっただのしおりが増えただの小さな変化に気付くためには、目星もしくはこれを調べるなどの宣言がいる」と教えるとよい。


□「穴を掘っているやつら」
部屋の隅、床に収納庫のような地下室へ続くであろう鉄板の扉が現れたことに気付く。
詳しくは2-5.地下への扉の項目を参照。


■病院で彼女の顔を見る
引き戸に病院の扉にあったような小窓ができている。中を覗くことも容易だろう。

何もない真っ白な部屋の奥、両開きの扉にもたれ掛かるようにして一人の女性が座っているのが見える。
長い黒髪に、開いてはいるが何も映していない二つの目、そして部屋と同じく真っ白なワンピース。何をするでもなく、彼女はそこにいる。



■ジャーナルの切れ端
部屋で<目星>を行うか、机を調べるという宣言で机の上に未鹿迎市ジャーナルが一冊増えていることに気づくことができる。
落丁が酷いが、モテカワコーデについての記事を探す、もしくは<図書館>でデートファッションの一例と共に【色の雑誌】の情報を手に入れる。


■彼女のフルネームを知る
田原から「瀬戸口」、子供たちから「彩」の名前を聞いている場合、机の上に小さな玩具の宝石箱が置かれている。
中にはカタカナ表記の50音プレートが入っている。よく見てみると、ガ、パなど濁音と半濁音もあるようだ。
このプレートを引き戸の枠に「セトグチアヤ」と並べて入れることで、2-2.引き戸の先へ進むことができる。


2-2.引き戸

中は小窓から覗いた覗いた通り。彼女と扉以外には何もない真っ白な部屋。
彼女には触れられず、どのような技能、行動も意味をなさない。
(彼女に直接影響を与えることができるのは彼、もしくは魔力を付与されたナイフのみ。)

更に奥の両開きの扉は押して開けるタイプのものだ。
開けたいという探索者がいれば、彼女が扉にもたれ掛かっているため、扉を押し開ければ彼女もそちらへ倒れる可能性があると告げる。
確認を取っても、それでも開けるとPL全員が選んだ場合3.エンディングのデッドエンド処理に移る。



2-3.木のドア

左の壁に出現したドア。木でできているそれのドアノブには女の子と男の子のかわいらしい人形が飾られている。
ドアを開けば筆記机に椅子、ベッドにクローゼットといったごく普通の部屋だ。
カーテンや置かれた小物から女性の部屋だろうと思う。(現実で彩の部屋を訪れていれば彼女の部屋だとわかる)
全体に<目星>を行うか、部屋の印象を気にするならカーテンや絨毯、小物類などにピンク色のものが多いように感じる。

最初からあるものは、机、クローゼット、ベッドのみ。
机には高校一年生の現代国語の教科書、クローゼットには部屋に反して地味な色のかっちりした服がしまわれている。
またそれぞれから、かわいい服装案の絵や、『化粧 控えめの方が好みかも?』と書かれたメモも見つかり、この部屋の主がオシャレに随分と悩んでいる様子も伺えるだろう。
ベッドにはたくさんのぬいぐるみが鎮座しており、<目星>に成功するとそれらの一体が小さな鍵を持っているのに気が付く。(キャリーケースに使用する)


現実で得たものによって発生する追加描写は以下の通り。

■カレンダーを確認する
カレンダーがあった場所にクレヨンで描いたような幼く柔らかい【絵】が飾られている。
一目見て、たくさんの色が使われているな、と感じる。


■ブックカバーを見つける
本棚が出現。(日記がない以外の蔵書は現実の彼女の部屋と同じ)
<図書館>に成功した探索者は題名のない、ハードカバーサイズの黒い本を見つける。
開いてみると、始めの方は印刷された文字だというのに文字化けしていて読めない。

次のページを捲ると、そこには『ニャルラトテップ 999の顔を持つもの』と書かれている。読んだ者は<SAN0/1>の処理を行う。
『その無貌の怪物は、人から動物、果てはまた別の恐ろしき姿、何にでもなることができる。
 それの知らぬことなど一つとしてなく、全てはそれの退屈を紛らす玩具でしかないのだ』

更にページを捲っていくと、少し丸みを帯びた字で日記のような内容が綴られている。
日付は2ヶ月前から1ヶ月前まで。日本語の文章とその下に英語の文章で構成されている。(彼女の日記と同じ)
内容を読んでいくと、【彼女の日記】に気になる記述を見つける。



2-4.曇りガラスのドア

壁、天井、床、全てが灰色の部屋。
この部屋には大きな本棚がぽつりと置かれている以外は何もないように見える。

大きな本棚の蔵書を<図書館>で調べると『夢の終わり』という題名の本が目に止まる。
手に持ってみると不安定な重さを感じ、開いてみるとページがくり貫かれているダミーブックであることがわかる。
中には不思議な雰囲気を持つ紫の柄のナイフが一本収められている。
(※魔力を付与されており、これのみが彼女と彼に影響を与えられる)
また、本棚に対して<目星>を行うと、人数分の懐中電灯が棚の隅に置かれているのにも気づくだろう。
(穴の底に降りるための補助になる。これは彼の悪戯心によるもの)


以下は追加描写となる。部屋に初めて入った時から条件を満たしていた場合は、適宜描写を加える。

■猫の話を聞く
両手で抱えられる程度の鞄が無造作に置かれている。<知識>などでペット用のキャリーケースではないかとわかってもよい。
この鞄の開け口のような部分には小さな鍵穴があり、またそのそばに七色に塗り分けられたルーレットのような【つまみ】がついている。
現在は銀色のつまみは、回すことで七色のうちどれか一つの色をセットできるようだ。

ベッドで手に入れた小さな鍵を使い蓋を開けると、中には小さく、ふわふわした毛並みに爪と肉球のついた前足、くりくりした目で探索者を見つめる生き物がいる。毛並みはつまみでセットした色だ。
この生き物はとても大人しく、エンド時以外は自発的に動くこともない。探索者のするがままだ。
なお、この生き物に対して<生物学>を行うと、猫ではなく、ライオンの子供のようだとわかってしまう。


■ブックカバーを見つける
部屋を<目星>する、もしくは本棚を気にすると本棚の中身が増えた気がする。
(この部屋に初めて入ったとき既にハードカバーの情報を得ているなら「本がとても多いので図書館が二回振れます」と伝えるとよい)

<図書館>に成功することで、(ここでも)ハードカバーサイズの黒い本を見つける。
前述の彼女の部屋で見つかるものと最初のうちは同じだが、あちらの本では日記が書かれていた辺りに差し掛かると、読んでいるあなたに語りかけるような文章が記されている。【黒い本】の文章を開示する。
以降はすべて白紙だ。



2-5.地下への扉

床に現れた貯蔵庫のような扉。扉越しに<聞き耳>を行っても結果は0-1.導入の部屋と同じ。
扉は見た目ほど重くはないので、探索者が宣言すれば開けることができる。

扉を持ち上げて開けると、ぽっかりと闇が口を開けていた。
そこには穴があった。
足場を選び、慎重にことを進めれば降りていけるかもしれない穴の底、低く、不快な囁き声が聞こえてくる。

かじりとられたような土肌に、自らの肌が泡立つのを感じた。<SAN0/1d4>の処理を行う。


明かりがない状態でこの中に降りたいなら<登坂-20>のロールに成功する必要がある。
明かりがあれば-20の補正は入らないが、失敗すればどのくらいの深さがあるかわからない、何が潜むかも知れない穴の底までまっ逆さまだと脅しつける。
(探索者があまりにも楽観的なら<アイデア>を振らせ、地質の警告を思い出させるとよい)
それでも降りるなら、探索者は辿り着いた穴の底で地底を掘るものに食い殺され、現実では昏睡ロスト扱いとなる。


3.エンディング

エンディングの分岐は『連れて行くライオンの色』と『彩を殺すかライオンを殺すか』が主となる。
(引き戸を壊している場合は各特殊エンドとなる場合があるため注意)

場合によってはするっとエンディングに入ってしまいます。
PLがエンディングに関わる行動をとると宣言した場合は描写に移ることを告げ、その選択でいいか確認してからエンディング描写を読み上げてください。



■True end
条件:黒いライオンを連れて行き、彩もライオンも殺さない

あなたが黒い彼を彼女の元へ連れて行く。彼はあなたの手からするりと抜け、彼女の目の前でぐるる、と喉を鳴らした。
その声に、彼女がゆっくりと彼を見る。それを確認した彼は、彼女の純白のワンピースにそっと触れた。
途端、ワンピースがじわじわと黒に侵食されてゆく。見る間に、彼女は灰色に包まれた。
「会いに、来てくれた」
灰のワンピースをまとった彼女は、にっこりと微笑んで彼にそう言った。
答えるかのように、彼は彼女の周りをぐるりと回り、そして奥の扉を押し開ける。彼の後に続くように、彼女は開いた扉の先、夜の星空のような黒の中へ足を踏み出す。
ゆっくりと扉が閉まっていく時、あなたたちは、
「ありがとう」という声を聞いた気がした。

そしてあなたたちは目を覚ます。もう、あの夢を見ることはないだろうという直感があった。
何故なら、呼び声の主‥‥彼女は、彼に会えたのだから。


『あわいの呼び - トゥルーエンド』
・報酬 SAN 1D12+1D8
・技能成長


■happy end
条件:黒いライオンを連れて行き、黒いライオンをナイフで殺す

あなたが黒い彼を彼女の元へ連れて行く。そして、あなたは持っていたナイフで彼の首を切り裂いた。
途端、溢れる血の赤とねじれた黒。小さな体からは想像もつかないほどの混沌が白かった部屋を黒に染めてゆく。触腕、鉤爪、伸縮する肉の塊。円錐形の頭部に顔はないというのに、咆哮があなたたちの鼓膜を震わせる。<SAN1D10/1D100>

我に返ると、そこには浅黒い肌に整った容姿の青年が立っていた。
彼が見つめる先、そこに座り込んだままの彼女の白いワンピースが、飛び散った彼の赤と混ざって桃色に変わっていく。
「会いに、来てくれた」
桃色のワンピースを身にまとった彼女は、頬も薄く染めて、彼にそう言った。
「君が呼ぶから、ね」
彼は答えて、彼女の手を取って奥の扉を押し開ける。夜の星空のような黒の中へ、二人は足を踏み出した。
ゆっくりと扉が閉まってゆく時、彼女が振り返り、
「ありがとう」と、あなたたちに微笑んだ。

そしてあなたたちは目を覚ます。もう、あの夢を見ることはないだろう。
何故なら、彼女は、彼と共に行くことができたのだから。


『あわいの呼び - ハッピーエンド』
・報酬 SAN 1D12+1D8+10
・技能成長、心理学+10


□Normal end
条件:①黒ではないライオンを連れて行く

あなたがそれを彼女の元へ連れて行く。
それはあなたの手からするりと抜け、そして、

座り込んでいる彼女の首を切り裂いた。

ぱたたっと音がして、白に赤が飛び散る。それらは決して混ざることはなく、ゆっくりと彼女はその場に倒れ伏した。

そして、あなたたちは目を覚ます。夢か現実かわからない生々しい死の感覚。<SAN1/1D3>
しかし、もうあの夢は見ないだろうという確信があった。
何故なら呼び声の主は、夢の中にさえいなくなったのだから。


『あわいの呼び色 - ノーマルエンド』
・報酬 SAN 1D5+1D3
・技能成長
※黒ではないライオンを殺した場合


条件:②彩をナイフで殺す

あなたは手に持ったナイフで彼女の首を切り裂いた。
ぱたたっと音がして、白に赤が飛び散る。それらは決して混ざることはなく、ゆっくりと彼女はその場に倒れ伏した。

そして、あなたたちは目を覚ます。人を手にかけた。夢か現実かわからない生々しい死の感覚。<実行者SAN1D2/1D6><傍観者SAN1/1D3>
しかし、もうあの夢は見ないだろうという確信があった。
何故なら呼び声の主は、夢の中にさえいなくなったのだから。


『あわいの呼び色 - ノーマルエンド』
・報酬 SAN 1D5+1D3
・技能成長


□Bad end
条件:未鹿迎市から逃げ出す

あなたたちは呼び声の届かない場所まで逃げた。
未鹿迎市を愛する者たち、そして誰かを呼び続ける彼女がどうなるのかはあなたたちにはわからない。
何故なら、あなたたちにはもう、あの呼び声は聞こえないのだから。


『あわいの呼び色 - バッドエンド』
・報酬なし


■Dead end
条件:彩を扉の中へ落とす

彼女と共に、扉を押し開ける。そこには、星一つない暗黒の夜空のような闇が広がっていた。思わず、後ずさる。
ぐらり、と彼女の体が闇へと落ちた。ふっ‥‥と、それは一瞬で、まるで最初からここには誰もいなかったかのように。
どれだけ呆然としていただろう。あなたたちは気づいてしまう。

おかしい。目が覚めない。

それから、何をしようとあなたたちが目覚めることはなかった。
彼女は?未鹿迎市は?そのようなことは関係ない。
これから訪れることのない助けを呼ぶことになるのは、あなたたちなのだから。


『あわいの呼び色 - デッドエンド』
・報酬なし
・探索者ロスト





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